舞い散る日々のなかで踊れ

散財していくタイプのおたく。

令和元年五月七日、水道橋にて。

世間の10連休が開けた直後、Kis-My-Ft2 LIVE TOUR 2019 FREE HUGS!」東京ドーム公演に行った。非常にチャレンジングな日程での開催だとは思うけれど、カレンダーどおりの休日を消化しているわけではないわたしにとっては感謝しかなかった。

Amazonプライムを抜けたら、アルバムが土曜日に届くという事態になってしまい(予約の意味…)、そのままGWに突入したのでじっくり聴き込むこともなかなかできず、バタバタしているうちに本番が来てしまったので、いつになくフラットな気持ちと状態で向かったことは確かだ。

今回はじめてひとりで行ったので、なにかを決めたり話し合ったりしなかったのもあるかもしれない。唯一決めていたのは、人気すぎて地元で品切れが続いていたシャネルのココフラッシュ56番を絶対に買うっていうキスマイには関係ないことだけ。だけど、「モマン」という名前が「MOMENT」と書くことをパケで知って、なんというか今日という日にふさわしい名のルージュだなとは思った。数十年の人生のうち、三時間足らずのライブなんて瞬間でしかない。でもその瞬間を積み重ねて生きているし、そのなかでもとくべつな瞬間なんていくつあるのか。しかも、誰にとっても節目となりえるようなことがらではなく、関係ないほかの誰かにとってはまったくもって意味も価値もないような。

 

アルバム「FREE HUGS!」はこれまでのキスマイのアルバムでいちばん好きだ。

まず、ソロも含めて好きな系統の曲が多かったし、これも好みの話でしかないんだけどわたしが描く「最高オブ最高のキスマイのイメージ」がたくさんあったのが大きかったことと「MUSIC COLOSSEUM」が出たときにも書いたのだけれど、年齢を重ねながらアイドルを続けていくことは音楽的な展望が重要なファクターのひとつだと考えていたので、そのあたりの意識的な進化を感じたこと。逆に、こんなむずかしいアルバム作っちゃってライブどうすんだと思ったし、でもその気概におどろいたと同時に、これ確変来たわって浮き立った。

あとは今の気分になんかあってた。これはキスマイのアルバムでははじめてだな。ほぼ一年に一回リリースされていたから、それをATM的に購入するのが常だし…一言で言えば今回は公式と解釈が近かったみたいな…だからまた手をつながされそうだという危惧が的中して笑った…まあテーマ的にありえたししょうがないよね。手をつなぐことがひとつになれることや境界を越えることだとキスマイが信じているならそれもひとつの真実なのでしょう。

そのうえでどんな楽しみ方をするかはそれぞれの自由だと思うし…必要なルールとマナーは順守すべきだけれど、こういう楽しみ方に接触するできごとはたとえキスマイからお願いされてもやるやらないを選んでいいんじゃないかな、と。わたしの隣になったひとがやりたいひとだったらそれはごめんやけど。自担を目にする機会なんてそんなにないから、わたしはあそこで手をつなぐよりも野鳥の会をしたい。不埒なファンでごめんね。

「We Are KAT-TUN」と「最高で最強の関ジャニ∞」ができるのにキスマイでできないわたしの理由は、参戦というよりお邪魔をしている意識が強いのももちろんあるけれど、それに加えて楽しみ方を強制される時間が発生するからなのかもしれない。「俺たちの名前は?」でやるって言い出したとしたら「君らそういうキャラじゃないだろ?」とか言いつつきっとやる。

手つなぎに関してはそんなかんじだけど、ライブ自体は可能性の

広がりを感じたいいものだったと思っている。

そう、いいライブだったのでここからは思い出しつつ抜粋してまとめ。※書き終わってみたら細かい記憶がかなり飛んでしまっていて、アルバムの感想のようになってしまったけど。

 

・開演前のこと

・ムビステのレールがあった。嘘やんて思った。キスマイってドームでいろいろな装置を使ってもムビステだけはなくて、なんというか…事務所的な?事情なのかな…?いまは懐かしき派閥とかそういうの関係あったりするのかな?と勝手に昔思っていたので謎の感動があった。もちろん数が少ないとかお高いとか、そもそもは松本君が考案した嵐のためのものであるということはわかっていても、それがあるということに動揺した。ムビステ自体はほかのライブで何度か観ているんだけど、今回正面で観たからかな。開演してから、変形しながら迫ってくる舞台で踊っている、という視覚的な効果のすごさをまざまざと実感した。

・メインステージのセットがいつになくシンプルでおどろいた。

・場内で、すごい目を引くかんじのおしゃな雰囲気の人が歩いてきて、関係者かな〜って思ってたら声優の蒼井翔太くんだった。嘘やんって思った。宮田くんのご縁なのかな?

・本編

・キスマイのライブのOPって「overture」を使ってメンバー紹介映像(というよりどのグループのライブを観てもそれがスタンダードのひとつだとは思う)があるから、観ているほうとしてはいつ来るかな、と構えているところはある。

でもOP映像が想像してたより重々しくて、音楽が消えた世界…?えっそういうかんじなの…?って戸惑っているうちに紹介がないまま「A.D.D.I.C.T」のイントロが鳴って突然メンバーが登場したから、不意うち喰らって

かっ、かっこいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

ってなった。「Girl you only love me」のところやってくれてありがとう。聴きたかった。

「Girl is mine 」アルバムのリード曲ってなかなかそのライブ以外では披露されないものだし、一生聴けないと思ってた。ありがとう〜〜〜〜〜〜〜涙 ドセンで見るレーザーと光の演出ありえないくらい美しかった…この曲だったはず。

・4曲目にしてさっそくかまされる「Bring It On」「A.D.D.I.C.T」もなんだけどキスマイらしい曲だと思う。どちらもこれまでキスマイが挑戦してきたことの最新形。二階堂くんと藤ヶ谷くんのラップのかけあいが新しくて良い…

・「HUG&WALK」 そもそも曲が最高だから披露されるだけで最高。この曲もMステでやってほしかったんだよ…

ソロコーナー

「僕だけのプリンセス」白馬に乗っていて王子すぎた。キスマイにおける宮田くんの存在の尊さをあらためて感じた。めぐさんの詞と山田さんの曲、という宝物が彼のもとに来たのは宮田くんがこれまでずっと繋いできたものの大きさがあるからだと思う。世間に向けてあれだけ「おたくアイドル」を貫いている異質さとグループ内での抜群の安定感があるという両極端なものを武器にできる稀有な存在で、心底キスマイに彼がいてよかったとわたしは思っている。

「Love Story」EDMから一転して今回はサーフミュージックな玉森くんのソロはシンプルなステージングで。CDで聴いたときにびっくりしたんだけど、こういう歌い方もできるんだなあ。どれだけ隠し持っているのでしょうか。毎度玉森裕太がこわいという話をしているのだが、やっぱりわたしはブレイクスルーを繰り返す玉森裕太がこわい。でもさ~同梱DVDに収録されていた、もふもふ犬に「ファーおまえやばい~」って言いながらわしゃわしゃしてる映像見ると「いや、おまえがやばいよその言い方かわいすぎて…」って頭抱えるからずるいんだよなあ。

「はぐすた」ヒップホップにまったく明るくないので、Diggy moってSOUL'd outのひとだよなあイメージはごりごり、の認識でしかないが、二階堂くんが挑戦しているラップはおそらく高度なものなのだろうし、最近ラップパートを担うことが常になった彼の更なる突破口になる楽曲だと思った。転調して不穏さ漂うモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」をサンプリングした楽曲というところから来ているのか、イントロで一心不乱にタクトを振る二階堂くんのすがたに彼の魅力のひとつであると考えている狂気を見た。

やっぱりソロは個性が出て非常に興味深いです。毎年やろうよ!

・「CHUDOKU」死…あんな登場されたら一瞬で僕は君のCHUDOKU…

そもそもこの歌詞がすごく良い。歌詞カードで読むと特に良くて、今っぽい言葉の選び方と並べ方の行間にすこしづつ進行していく部屋の雰囲気、ふたりのあいだの空気が漂っていて、メロウなトラックとマッチしていてめちゃくちゃ好き。声のコラージュも印象的。休みじゃないけど2時まで一緒にいてとかエモ~~~~い!!海外ドラマぶっちゃけ最初っから見てねえ系男子最高~~~~~~少プレでも歌ってね!!

たしか「THIS CRAZY LOVE」だったと思うんだけど、プロジェクションマッピングとダンスを融合した演出。派手な置物や装置のセットに頼らないシンプルなステージでも、こういうかたちで洗練したパフォーマンスを魅せられることに素直に感動した。

「Tequila!」バーのカウンターを模したセットでカクテルを作るような振りがついていて観ていて楽しい。実際カラフルな飲み物できてましたし。ファンキーな曲調が最近多くなってきていて気がついたんだけど、こういう楽曲ってなんかジェイ・ストーム感を感じる。

「ルラルララ」「Thank you じゃん!」は生音の吹奏楽と一緒に。いつかフルオケとライブで共演しているの観たいと思っていたので半分願いが叶った感ある。音響設備が整ったホールじゃなく、ドームでやるむずかしさはあるかもしれないけど、楽器から生音が出ている空間はやっぱりすきです。

・「#1Girl」 そもそも曲が最高なので披露されるだけで最高。ほぼ仕事だったGWの夜中、この曲を聴いていてふいに「こうやってキスマイの新譜を毎年ちゃんと聴けて、あたらしいキスマイに出会えるってしあわせなことだよな…」と謎の多幸感に満ちた曲。歌いながらセンターを歩く玉森さんの記憶しかない。この曲、玉森さんのイメージが強い。

・「僕ハ君ナシデ愛ヲ知レナイ」はザ・ジャニーズ。タイトルが北山さんぽいなとは思ったけど、ジャニーズご用達の作家さんたちが作ったのかと見まごうくらいのメロディはもとより、どこか和っぽいアレンジも最後のサビ前に2回駆け上がりながら転調していくところもこのアルバムでは浮くくらいにジャニーズい。だからこそドームでこれがはじまっって踊り出したときの安心感がすごい。

「3DGirl」一生聴けないと思ってたありがとう〜〜〜〜〜〜〜涙 

・ソロコーナー②

「キャッチボールをしよう」

横尾くんのソロはこのアルバムとライブのなかで唯一と言っていいほどヒューマンな手触りで、キスマイではあまりないタイプの楽曲を直球でやれるメンバーがいるという点でも、個性の集合体がすぎるキスマイの強みを再確認した。料理や俳句といった特技を伸ばして存在感を発揮してきた横尾くんですが、見せ方に趣向を凝らした前回のソロ曲から一転、歌を届けようとするステージングに、さらなるステップに挑戦しようとしているのかなと感じた。

「LOVE=X2U」

「close to you」だと思うんだけど※「cross to you」が正しいみたいなので追記で訂正しておきます どちらにしてもそれを「X2U」と表記するこの藤ヶ谷太輔感。自担の贔屓目かもしれないけれど、この難曲できちんと世界観を作り上げた藤ヶ谷くんのことすきでよかったよ!ひたすら凝視した。表情も仕草もなにもかも一瞬も逃さないつもりで双眼鏡を覗いた。そのとき世界には推しとわたししかいなかった…ってくらいの濃密な時間だった。ため息しかでねえ…

「I miss your smile」

はじめにピアノそのあとダンス、と千賀くんを千賀くんたらしめる武器を存分に使ったステージ。バラードだから激しい振りがついているわけじゃないのに、静のなかの動、を表現したようなエモーショナルなパフォーマンスだった。振付やダンス、あとアートとかもそうだけど、クリエイティブなひとなんですよね。感情を創造や表現に昇華することに長けているひとだなあといつも思う。

「DON'T WANNA DIE」

死…曲自体もアルバムでベスト3を争うくらいに好きなんだけど、実際にパフォーマンス観て、ドンワナ見るためにチケット探したくなってることに一番驚いているわたし誰担。曲の合間に見せた表情にずっと捕まれてて、今も聞くたびに「うっ」ってなってる。5万5千人と心中したと思う北山宏光罪深すぎるし、自由に曲と遊びながら、解釈沼から抜け出せないような演出を並走させた北山くんってほんと何者?

 ・「FIREBEAT」から着た赤の衣装がすごい好き。この衣装で踊ってる藤ヶ谷さん見て震えた。永遠かっこよすぎて。でも腰痛かったのかな?ファイヤビあんまり踊れてなくてあれ、どうしたのかな?と思った瞬間があった。いや、あいつはいつもだよ!ってクレーム言いたい人いたらごめん。バクステで特効打ちまくるかお決まりのパターンかと思いきや、ムビステで「FIREBEAT」→「Distance」メンステで特効打ちまくり。思いきった刷新に言葉にならない進化を感じた。

「全力ファイター」は仕事でGWとそれに向けた準備に奔走していたことを思い出して、勝手にエールに思えて泣けた…

アンコールは3曲「君、僕。」「Yeah E Yeah!!!」「負けないで」のポップで明るいテイストでまとめて、さっくり終了。世界はキスマイによって無事音楽を取り戻したようです。

 

・まとめ

毎年観ていて、今年ほど「破壊と再構築」という言葉が浮かんできた年はないかもしれない。現状維持を嫌い、今までいろいろと新しいことを重ねてきたとは思う。それはきっとライブという3時間を構成するにあたっての型のようなもののなかで繰り返されてきたにすぎない。それ自体は悪いことではなくて、逆にこれまでに作り、育ててきた「かたち」は自信や安定感に繋がっている面も大きかったと思う。けれど、ここに来てまさか輪郭ごと壊して、新たに構築するとはちょっと衝撃的だった。ゼロにすることに誰しも恐怖や不安を抱くものだろうけれど、それさえ受け入れて超える強さと自信、覚悟をキスマイは手にしたんだなと感じた。

「Yummy!!」はひたすら濃い、という印象が大きくて、それに比べると今回はずいぶんさらりとしていたことをあらためて考えてみる。前回はトッピング全部乗せのような料理を目で見て、匂いをかいで、口にいれて咀嚼し、飲み込むという肉体感覚的な楽しみ方が提示されたライブだったとわたしは思う。今回はもはやそういった個人の感覚ではなく、アルバムのコンセプトにも掲げたようにすべてを抱きしめようとしたキスマイの世界のなかで境界を越えて、もうその世界の一部になったんじゃないか、という気がした。外側から五感に働きかけるのはいつだってじぶん以外の異物だ。感覚を越えて、その空間や時間そのものに溶け合ってしまえば、きっとそこにあるものは異物でもなんでもなくナチュラルなものでしかない。さらりとしてはいたけれど物足りないなんてことを微塵も感じなかったことを鑑みると、あの瞬間、たしかにわたしはキスマイの世界の一部だったのだと、そんな不思議な錯覚に陥るような夜だった。