舞い散る日々のなかで踊れ

散財していくタイプのおたく。

朝を信じて、Kis-My-Ft2「To-y2」を聴く。

世の中が忙しなくてピリピリしていて、かならず明ける日は来るだろうけれど、いつ明けるともわからない手探りの夜は不安でしかない。日常の風景と足元が揺らぐと、思考も感情も散漫になって、おぼつかなくて、ついじぶんを見失う。
書店は忙しいので仕事はあるし一定の収入もある。だけど、道中すらめちゃめちゃ楽しみなくらい大好きな友達が誘ってくれたストのライブが延期になったり、8年ぶりに観たら倒れるんじゃないかってくらい待っていた東京事変のライブが中止になって、このままきっと4月のキスマイ東京ドームもトラジャの城ホもないんだろうなあって(※書いているあいだに中止が決まった。絶望)考えるたびに「ライブを楽しみにして日々をがんばろう」という、これまでの乗り越え方ができないことを思い知らされて気力は削られていく。
もちろん状況は理解している。しかたがないと思う。みんなそうだし。もっと大変なひとたちもいると思うから、そんなこと言ってちゃいけないのも。それでも悲しいもんは悲しいし、仕事と人生のモチベーションが下がってるのは事実なんで言わせてよ。言って自分を納得させたいだけなんだ。
でも、楽しい気分を創り出すことも必要かなって最近考え直してて、とりあえず楽しい気分でKis-My-Ft2のNEWアルバム「To-y2」の感想を書きます。
感想はきっと語彙力なくしたオタクのそれになりますがご容赦。

4作目のアルバム「Kis-My-WORLD」以降、メンバーの頭文字でもあるグループ名を、順番に1文字ずつアルバムタイトルの頭に持ってくる試みも、今回の「To-y2」で完結なのかな?玉森くんのTを冒頭に、そして二階堂くんの二を終わりに使うことでこのプロジェクトは完成して、来年は10周年だから、オリジナルアルバムでなくベストアルバムリリースでしょうね。
ついでだからここまでの5作の感想を三行くらいでおさらい。
「Kis-My-WORLD」
キスマイの世界と銘打たれたが、正直世界観が謎アルバムだった。単品でいい曲もあるんだけど、キスマイの創造性がわたしの理解の範疇を超えていた。
「I SCREAM」
夏に特化した曲多め。ダンスミュージック多め。すき。非常に良作。この時点でキスマイが届く最高到達点だと思った。
「MUSIC COLOSSEUM」
メンバーそれぞれが収録曲をひとつ選び「個性」をぶつけあうそんな闘技場。バチバチな曲多め。これまでに比べギターサウンドが突出していた印象。
「Yummy」
キスマイの音楽的多面性全部盛りみたいな美味しい丼ものかもしれないし、闇丼かもしれないアルバム。どちらにしても味は良い。味付けは濃い。
「FREE HUGS!」
なにしろタイトルとともに掲げた「愛を共有し、音楽でボーダーラインを越えよう」というテーマが秀逸。視点が世界に拡がるとは…今時感のつよいおしゃれで軽やかな印象のアルバム。件の「CHUDOKU」はこれの初回Bに収録されています。

 

「To-y2」

 

To-y2(CD2枚組)(通常盤)

To-y2(CD2枚組)(通常盤)

  • アーティスト:Kis-My-Ft2
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: CD
 

 
1.9th overture
外国のこどものおしゃべりから始まって、さまざまなジャンルの曲をつなげたインスト。この先の収録曲なのか…?プレゼントの箱のなかにさまざまなおもちゃが入っていることを思わせる。
2.To yours
おもちゃ、のほかに「To yours」もタイトルにかかっていて、おもちゃ箱のような音楽性または魅力とのWミーニング。ラブソングの体をとりつつ、ファンへのメッセージのようにも感じる。キスマイのアルバムリード曲は一発で掴んでくるような強いものが多いので、さわやかポップスは意外だったが「君の笑顔の一つは俺が理由だったらいいな」という詞は正解すぎた。そうだよ!
3.りあらぶ
王道アイドル路線続くやん。デビュー10年間近になっても、こういう楽曲を歌い続けられるいい意味での「青春っぽさ」をキスマイが持ち合わせ続けている証拠かもしれない。
4.HANDS UP
シングル曲。こんなこと言ったらアルバムのコンセプトを否定するようなことにもなりかねないけれど、わたしはこういうガチガチのダンスミュージックがキスマイの十八番だし、一番魅力的なんじゃないかなと思っている。キスマイってかなり踊れるグループですよね。
5.Cannonball
かっこいい!ライブ映えすると思う。随所にホイッスルみたいな音入っててこれが「サンバのエッセンス」なのか。ちょっと「Brand New World」に似ているね。
6.Letting Go
毎度たのしみにしている洋楽み(としか言えない語彙力)楽曲。ライブでのパフォーマンスも年々重要な見せ場になっていることも多いので、期待している。

7.Positive Man

わたしが知っているかぎり、キスマイ、レゲエははじめてじゃないかな?もしかしたらレゲエテイストだけどわたしが気がついていない、っていうのはあるかもしれないけれども。けっこう似合う。聴いてても身体が揺れてたのしいし、ライブで踊るのもたのしいと思う。気に入っている。

8.MAHARAJA
キャッチーなメロディに乗せての「お金なんてただの紙さ」wwwwwwwwwwwwwwwwwこれは中毒性がすごい…リピート(n回目)しちゃってしばらく先に進めない。9年目にしてこの新境地、思いがけず愛があふれた。

9.Be alright
学生時代スカパンクスカコアをよく聴いたので、個人的にはすごくなつかしい耳触りの楽曲。はじまった瞬間笑っちゃったもん。
10.My Place

ここまでのジャンルのおもちゃ箱すぎて、落ち着くーと思ったら安心と信頼のJazzin`parkさんだった。
11.Edge of Days

エッジの効いたロックから光が広がるようなサビがいいねえ。アレンジってこんなだったっけ?PC変えたからそう聴こえるだけか。そもそもこのシングルが「To-y2」の前哨戦だったんじゃないか、と今となっては思わされるほど、通常盤の収録楽曲の幅はえぐかった。

12.Make you mine

イントロから確信する「わたしのすきなやつ」そしてその確信を裏切らない。なんかディスコティック。

13.Sometimes…

待って、これめちゃめちゃいいじゃん。ジャジー。年齢を重ねることで活きるセンチメンタルな歌詞がすき。
14.memento

「やめるときも すこやかなるときも」の主題歌。まっすぐで素敵なバラード。だが、ドラマ全部観れてなくてごめん藤ヶ谷くん。待ってて…そのうちちゃんと観るから…
15.COUNT 7EVEN

えっアニソン?って思ったら上松さんが作ってた。えっすごい。ElementsGarden参戦すごい。往年のアニメの主題歌のような雰囲気も感じさせるアレンジ。アニメのOPみたく

この曲でライブはじまっちゃったらわたしは一気に沸点まで行ける。

16.Smilest

 これまで、ラブソングにしてもそうじゃなくても、近い距離間というか、キスマイの視点がごく近い場所でとどまっているような気がしていたんだけど、なんていうかな、もっと広がったというか、もっと大きく広げた腕で抱きしめるようになったというか…「君」は「君」なんだけど、キスマイの目により多くの「君」が映っているようなそんな印象を受ける。それは彼らがファンから遠ざかったという意味ではなく、彼ら自身が広い景色と世界を手に入れたうえで、ひとりひとりの「君」に向けてきちんと丁寧に届けている、そんなイメージ。

 [Secret Track] 
が、合唱…?!??!!シークレットにはもったいないほどの良曲。曲の特性上、歌い方を意識しているのか、はっきり聴き取れる歌詞もすばらしいので、これみんなで歌ったらたぶんわたし泣く。ただ、予想される我々のパートけっこう難。

 

【Bonus Disc】

1.#NO!NO! 玉森裕太二階堂高嗣

曲のトレンド感すごい。Spotifyの「Tokyo Super Hits!」に入ってても違和感なくない?B型のふたりならではの歌詞がちょっと笑えてかわいい。
2.バクテリア 北山宏光藤ヶ谷太輔

狙いすぎ。でも(もういっかい)と「秘密だよ」で変な声出た。おたくなんてこんなもんさ。「それでなに?」の北山くんの歌い方ッアア うっすら聴こえるふたりの「おい」もいいです…

3.王国の蝶 横尾渉&千賀健永

夏井先生が俳句で作詞に参加しているのもすごいなって思ったし、曲がジャニーズの和の舞台を思わせて高まる。あと千本桜とかも。部活で琴をやっていたこともあって、問答無用で好きな音色。単体もいいけど、打ち込みとの絡まりはさらに好き。

4.運命 宮田俊哉玉森裕太

えっアニソン?てかキャラソン?ってびっくりしたら上松さん(二度目)歌詞に関してはもう他担が何を言っても野暮なので、このカタストロフを「運命」と位置付ける宮玉がガチで怖い、とだけ。玉森裕太はやはり天才。曲尺4:44て。

 

今回のアルバム、すごくポジティブなアルバムで聴き終わったらハッピーで元気になってるビタミン剤みたいな一枚だと思った。ただ明るいだけじゃなくて、さまざまな人生の風景が存在しているのをわかったうえで、それでも背中を押してくれるような。基本的にアイドルには存在そのものにそういった作用があるし、キスマイのこれまでの楽曲にもそういう曲がなかったわけじゃないんだけど、意志を持ってこれを作った強さが伝わる。わたしはそう感じた。それこそ「Smilest」のところで書いたように、「FREE HUGS!」を経て獲得した視点の変化、これに尽きる。あるいは深み、頼もしさ。
「FREE HUGS!」に限らず、「I SCREAM」あたりから音楽的な挑戦を続けていることもまた、ずっと地続きで今日まで活きていて、選択肢が増えたな、と思う。

そのうえで、収録曲の音楽ジャンルは多岐に渡っても、それほど奇をてらうことなく(MAHARAJAのような変化球もあるけど)肩肘を張らず、一周してアイドルがもたらす「ポジティブさ」「ハッピー」というところで直球勝負できるのは、彼らがより強くなった証なんじゃないだろうか。

そんなことを考えながらリピートしていたら、わたしはすっかり足元が地について日常に舞い戻ったような、そんな気分がいつのまにか満ちていることに気がついた。

4月は無理になってしまったけれど、いつか、またいつか会おうね!!

この世は不変じゃなくて、いつかがないかもしれないことなんてわかってる。それでも今は、今日このときを生きる希望を繋ぐように、そんなことを願わずにはいられない。