舞い散る日々のなかで踊れ

散財していくタイプのおたく。

青春の瞬きが突き刺さる。

劇場アニメーション『びたがってるんだ。』を観てきたのでその感想(ネタバレ含

 

予告↓(貼り付け方あってるかわからないけど…)


映画『心が叫びたがってるんだ。』本予告 - YouTube

 

ジャニーズとは関係ないけど、趣味の話だからいいよね。基本的にわたしは第一にアニヲタなのだ。

 

まずこのタイトルね。このタイトルを知っただけで観たくなるマジック。この魔法にかかるってことはわたしも心が叫んでないのかな、と思う。わたしは素直じゃないので、本当にそうだ…特にね、好きなひとに好きだと言えないです。見込みないのにぶつかることができない。伝えればよかったと後悔しているひともいる。あとはやっぱりめんどくさいことになりたくないから、「言いたいことがあるならはっきり本人の前で言えばいい」的思考が苦手。言えない。嫌われるのが怖いからだと思うんですが、でも何気なく言った言葉で傷つけてることもあったので、結局言わなくても言っても傷つけることがあるんですよね…難しい。

 

さて、この映画のあらすじをざっくりまとめると、おしゃべりな主人公の成瀬順が幼い頃に言った言葉が原因で両親を離婚へと導いてしまい、突然湧いて出た玉子の妖精に「ひとを傷つけないように」お喋りができない呪いをかけられてしまいます。それ以来、高校生になっても誰とも話さず、言葉を発せず暮らしていました(喋るとお腹が痛くなる)

しかし、学校と地域とのふれあい交流会が催されることになり順は実行委員に選ばれます。ともに選ばれたのは坂上拓実、田崎大樹、仁藤菜月の三人。そのふれあい交流会でミュージカルを上演することが決定し、順は自分の気持ちを脚本にし、拓実に励まされ、本当は言いたいことを歌って伝えようと考えました。そして順だけでなく、他の三人も心に言えない想いを隠していて……こんなかんじ?

 

とりあえずキャラクター評(あくまで個人主観)

成瀬順…激萌え。この一言に尽きる。喋らない代わりに表情や仕草、動きが豊かで本当に可愛らしい。不器用すぎて若干他人から見るとイラつく場面もありそう。cvの水瀬いのりさんが本当に上手い。静から動へ感情が動いていくにつれ声が漏れてくる順ちゃんの成長に泣いた。

坂上拓実…順ちゃんと同じような境遇を経て本音を言わなくなった少年が開いていく様がもう。内山くんイイネ!どんどんエモーショナルになっていく坂上少年に、とうの昔に過ぎ去った青春の果てで疲れ果てているおばさんには眩しかった。嗚呼…高校時代にこんなひとに出逢いたかったぜ!

仁藤菜月…優等生で美人、人望もあるハイスペック少女。一番大人だし、正直な気持ちをありのまま見せないように取り繕ってるなー言っちゃいけない言わない、で拓実とは現状維持に勤めているんだなって感じ。正直厭味ったらしいほどいい子。ほんといい子なんだろうけど。恋に悩んでいるのである意味一番普通。でもその普通が高校生ってかんじ。他が重すぎなんだよ。

田崎大樹…なんだこのDQN!?怪我して甲子園への夢が破れたからってすべてに当たりすぎと思っていたけど実直なだけあって心を入れ替えてからはいいやつすぎか!細やんほんとうまいよねえ。『坂道のアポロン』とかもそうだけど。怪我してもう部活出て後輩にやいのやいの言ってたらうざがられるってもうあの、仕事とかでもある気がしてきて汗。良かれと思ってもマイナス、こういうことはある。日常に。まあやさぐれても三嶋くんに守られてるけど。なんか男子高校生がつまってるキャラだった。

 

一番良かったシーンってなると、やっぱりラストに向かう、廃墟になったラブホテルのシーン。ここから号泣タイムが始まったので…それまでも「町内会費ありがとう」までのくだりとかでうるうるしたりしていたけれど、もうここからはカタルシス。

順の書いたミュージカルの脚本は、ほぼ自分を踏襲した作品なので、ひとを傷つけ、罰を受けて言葉を失った少女の前に、優しい王子さまが現れたことで愛を知り、想いがあふれ、けれども話せないので伝わらなくて…そこから事件を経て少女の気持ちが皆に伝わるという内容。つまりその王子が拓実。拓実は順にとって本当に王子さまだと思うんです。山の上のお城に憧れて(ラブホ)、いつか王子さまと舞踏会に…と夢見ていた幼ない日の順。今はそんなに夢見がちじゃないとはわかっていても、突然現れた、はじめての王子さま。それこそはじめは接点がなかったふたりだけれど、両親のことも、玉子の妖精の呪いのことも、初めて話した(メールでのやりとりだけど)のが彼だと思うし、順が「わたしの心をのぞき見していますか?」と思うほど、順の気持ちを言葉なしでも汲み取ってくれたひと。歌なら呪いは関係ないかもとか、伝えたいことがあるなら歌ってみてもいいんじゃね?とか言ってくれたり、ミュージカルがめんどくさい、というクラスメイトたちの前で真剣に説得してくれたりお腹痛くなることを心配してくれたり…そら惚れるわ。完璧王子じゃん。

公演日前日、最後のリハーサルを終えて片付ける二年二組。そのときに、順は拓実と菜月の会話を偶然聞いてしまい、ふたりがかつて恋人同士だったこと、そして一番大切なことが拓実に伝わっていなかったことを知ってしまうんですよね。歌わなくても思ってることわかる、と言ってくれたのに。

菜月は拓実が一番大変な時期(両親の離婚のことだと思われる)に何もできず、しかもまわりに付き合ってるの?からかわれて、違う!といってしまったことを拓実に聞かれてしまい後悔しているし、今でも気持ちがあるゆえに、拓実が順を好きだと思ってやつあたり気味で拓実にくってかかるときに(この気持ちも本当によくわかる)拓実の気持ちが本当は誰にあるのか完全にはっきりとわかってしまうし、しかも「言いたいことは言わなきゃ伝わらない」と。もうね、これを聞いた順ちゃんの気持ちを考えるとね、決壊した。

迎えた公演当日、順ちゃんは逃げる。色々なものから逃げ出す。クラスメイトは探してくれるけど、原因がわかって呆れてしまうし、幕は上げられないし、もう踏んだり蹴ったりの状況のなか、拓実が探しにいくわけですが「待ってろ…成瀬!」ってずるすぎだろお前…!っていう。あ、青春の中で走っていく様がですよ。結局菜月を少女役に変えて幕があがるので、せっかく見に来てくれたお母さんまでもまた落胆させ…

結局順ちゃんはすべてのはじまりになったラブホにいて、拓実と対峙したときに出た

「歌えない。わたしの王子さまはもういない」

そう、もういない。わたしの王子さまは違うお姫さまのことを愛している。歌えなくなってしまうかわりに、もう話してもお腹は痛くない。けれど胸が痛い。おしゃべりで両親を傷つけてしまったことを玉子の妖精のせいにしなければ、どうしようもできなかった順ちゃんの激しい言葉がどんどん溢れてくる。順も拓実もエモーショナル。もうこのへん泣きすぎて細かくあんまり覚えてないんだけど、確か成瀬の声って可愛いからもっと聴かせてくれとか、俺を傷つけていいよ…お前の言葉か聞きたいみたいに拓実が言っていて、順ちゃんが「今からあなたを傷つける」「思わせぶりやろう!」とか「あの女も同罪!いいこぶりっこ!」とか思いつく限りの悪口を吐き出す。それに対して、うん、うんと頷いて全部受け止めようとしてくれる拓実。ええ男や…!まあ菜月の悪口のときはちょっと微妙だったような。うん。勘違いかもだけど。

でもさ、拓実って鈍感野郎じゃん?今日の今日まで順の気持ちに気づかなかったわけで。でも今は一応気づかされたわけじゃん?そこで「お前に出会えてうれしいんだ!」はどうなんだろうね。そりゃ色々たくさん気づけただろうし、順ちゃん的にも「せい」じゃなくて「おかげ」ですごくやさしい気持ちになっていってるからいいだろうけれど、なんか恋愛的に見ると残酷…っていうおばさんの邪推です。

言いたいこと言い切った順ちゃんに、観ているこっちとしては一番大切なこと言わなきゃ!と願うような気持ちで…結果はわかってても。

覚悟を決めるように、順ちゃんは「わたし、坂上くんが好き」とはっきり告白。

それに対して「ありがとう。でも俺、好きなやついるんだ」

うわあああああああああああああああ知ってたけど!知ってたけど!なんて純粋で残酷!でもそれが青春…思い通りになることなんてそんなにないんだけど、切なすぎる…わたし拓順推しで観てたから…でもそのときの順ちゃんの泣き顔のあとの微笑みが美しくて……切なくて、坂上の野郎ーおめーぜってー後悔させたるからなーとか、うしろでガヤ入れたかったわw

そして順を連れて拓実が舞台へと戻り、順は少女の心の声として歌いだして大団円。結局拓実は菜月とよりを戻しそうなところで終わり、菜月が好きでラブホいこーぜとか言っていた(語弊がある)大樹が実はだんだん順に惹かれていて、告白するというまさかの展開のなかで物語は終幕する。大樹、ぶちキレてたもんね、順ちゃんが消えた理由がわかったとき。お母さん来てるって気がついて伝言頼んでたし。

 

所謂青春と呼ばれる時期は、長い人生のなかでは一瞬であり、しかしその一瞬に、どれほどのこころの機微が詰まっているか。十代の感情は剥き出しで、残酷、酸っぱくて、それでいて優しい。自分の存在意義とか立ち位置とか、必要とされているかそうではないのかとか、将来への不安とか展望とか、まわりのひととの関わり──友情とか恋とかそういうすべてをひっくるめて揺れ動くさまがスクリーンに映し出されていた。そのなかで簡単なようでとても深く、難しいもの、失くしてしまったほうが楽とさえ思うほどの、それでも本当に大切な、必要な、伝えたい誰か、話したい誰かのために発したい、発すべき言葉をテーマに描く今作に、こころをえぐられた。そうして自分の青春を振り返り、どれほど大切な言葉が言えないままに消え去り、どれほど性悪な言葉が誰かを傷つけてしまったかということをかなり考えさせられた。それでもそれがわたしの青春のすべてだった。今でも言えないまま仕舞われている言葉はある。それをこれからどれだけ伝えることができるのか、それを今思っている。

 

あ、吉田羊さんの声がとてもよかったです。お母さん役。感情を抑圧しつつも、つい娘を疎ましく思っていることが漏れてしまうところや、最悪、って娘にぶつけてしまうところ、それでも優しさがあったり。

それと相沢くんのキャラが最高でしたww