舞い散る日々のなかで踊れ

散財していくタイプのおたく。

Kis-My-Ft2『MUSIC COLOSSEUM』を聴いた。

届いた日にひと通り聴いて、そのあと職場に向かう車の中で毎日流している。

アリーナツアーを全外しして管を巻いていたところ、うちの玉森担が復活当選を果たすという奇跡を起こしたので休みをねじ込んだはいいものの、静岡なのでとりあえずガンガン聴こうぜ!のスタンスで急いで体内に全曲を取り込んでいる最中。

正直なところあらかじめしていた試聴の段階では「???」と思っていた。よくわからなかった。キスマイ、いつも今回は攻めたっていうじゃん?(キスブサのたいぴ風)試聴だけじゃあまりそれわかんなかったんですよね。「MUSIC」なんて冠してるわけだから音楽的に攻めたのかなってスタッフブログから考えてたんだけどもしかして違うのかな、プロデュースするって新しい取り組みのことを言っているのかなと思ったり。自分の捉え方や汲み取りがうまくいってないのが大半の原因なんじゃないかって知ってるけど。なんだかここのところずっと雑音が多すぎた。

まあそれは置いといて。一枚通して聴くと試聴とかなり印象が変わるということはよくわかった。もうぜんぜん違う。『I SCREAM』が試聴だけでがっつり掴んでくるほどのわかりやすい開放的でキャッチーな作品だとしたら、『MUSIC COLOSSEUM』はもっとひねりをくわえた「ああ、これがあなたたちのMUSICなのね」ってこれは音楽だねって言える意欲作なんじゃないかと思う。

さいしょに感じたのは、イヤホンなしのスマホで聴いていたときは気がつかなかったけれど、すごく音が作り込まれているなということ。車に搭載された普通のプレイヤーでもわかるくらい、きっちり作ってある印象だった。もともとAvexお家芸的サウンドの曲をたくさん作ってもらってきたキスマイだし、今回も例に漏れずそうだしやはりAvexさすがって感じるんだけど、いつも以上にフックが多いというか、今のとこの音おもしろいなって感じる場面が多いような気がする。

誰がどの曲をプロデュースしたのかは予想でしかないし、ぶっちゃけこれ誰かわっかんないなーって思う曲もあるんだけど、ここまでよく統一感持たせられたと感心する。去年のソロ曲7曲にみえた個性って明らかにばらばらだったけど、Kis-My-Ft2の楽曲を、となったときにアルバム一枚の中にさまざまなテイストを交えつつ違和感なくそれぞれがおさめることができるって要は7人の「Kis-My-Ft2の進むべき方向性」がおなじ矢印、スタンスで共有されているということなのではないかと思う。安心した。ほら、キスマイちゃんってけっこうひとりひとりがインディペンデンスなかんじだから…

とりあえず総評のようなものは以上で、恒例(2回目)の全曲レビューなんかを書きたいと思う。

 ***

1.Overture~Music Colosseum~

まさかの歌入り。もしかしなくてもこんなのはじめて。選びきれなかった曲からサビをもってきたのではないか?ここまでovertureにはっきりとしたコンセプトを提示したのもはじめてかもしれない。狼煙とかほら貝とかそういう開戦の合図のような意味あいを感じる一曲。

2.EXPLODE

「Tonight」から地続きの低音聴かせ系かと思いきや、アレンジ工場か?と問いたくなるほど色合いの変化を詰め込んだ面白いリード曲。だけど曲全体にまっすぐ強い筋がきっちり通っているので最後まで崩壊することなく聴かせるわあと思った。安心と信頼のJazzin`park。イントロ前の導入部分も期待感高まる。歌詞とダンスもつよい。衣装はちょっと笑っちゃうけどな。

3.VersuS

まずイントロが良い。今このイントロ鳴らすアイドルいます?キスマイしかいません。ヒップホップっぽいサウンドに和のテイストを組み込んだセンスや、マイクバトルならぬダンスバトルやっちゃいそうな兄組VS弟組って考えると千賀さんじゃないかと思ったけど、彼はほかにもこれかなって候補あるのよね。ヒップホップというと二階堂くんってイメージもある。ただファンクではないからな…サビの爆発が最高にエモーショナルで1曲目からここまで流れはまさに攻めているんだなと思えた。

4.いいね!

「いいね!」ってものすごく現代的なタイトルに笑う。こういう宴会的応援歌な曲は今キスマイがやるべき楽曲なのだろうか?とはじめは考え込んでいたけれど、キスマイがただただいいね!いいね!と言ってくれる様相に仕事つらい症候群の全俺が泣いた。やはり彼らはアイドルだった。ラテンノリって「Forza!」くらいしか覚えないので、単純に考えて5人の中にラテン系好きな子がいるのかしら…?千賀くんと別の曲に明らかなチョイスを滲ませている宮田くんを除くと3人だけど。というか花金って今使うんですか?いいね!ってリアル現代なワードを発しながら90年代みのある「花金」って言葉をチョイスしている絶妙なバランス感覚いいね!

5.レッツゴー!!

いいね!からの流れが秀逸。レゴバッドマンの主題歌ってこともあるのか、このアメコミ感ね!アホっぽさ(褒め言葉)さえ感じるような突き抜けるほど前しか向いてない歌詞と遊び心のあるサウンドの融合はキスマイがわりと歌うトンチキ系ポップの流れを汲んでいるんだけど、生バンドっぽいギターロックに箱から溢れてくるようなキラキラが揺れるデジタルサウンドが絡む音作りはガチ。頭からっぽにして楽しめる多幸感はちょっと泣きたくなる。

6.SEVEN WISHES

イメージと主観の話でしかなく長崎に住んでいるひとには申し訳ないはなしではあるけれど、『INTER』でイントロを聴いたときに「ああ!長崎わかる!」って思った。長崎ってそれこそ日本にはじめて異国の風が舞い込んだ場所って印象なのでこの異国情緒な匂いがするイントロがすごくしっくりきた。歌詞がやさしいのでつらいときにそのまま旅の支度してそのままふらっとどこかに、誰もわたしを知らない場所に行って充電したくなる。

7.優しい雨北山宏光

HusiQ.Kさんのメロディメーカーぶりがまた発揮されてしまった…(歓喜)「なぜ僕たちは出会ったの?」から畳み掛けてくるところが胸に来る。これはもうセンスに拍手を送るしかない。

8.One Kiss

この曲ほんとすばらしいんだけど。もうね、キスマイにはこういうのやってほしいの。ガチガチのデジタルやエレクトロ系だけじゃなくてハウスもいけるじゃない。もうね、こういうとこなの。キスマイすきって思うのは、こういうのさらっと取り入れてやっちゃうとこ。前回の「Flamingo」のような立ち位置かなって思ってる。こういうクラブミュージックやEDM界隈における世界規模な流れをキスマイに連れてくるのって誰だろう。最初やっぱり玉森くんかなと思ったんだけどあまりにもらしすぎてちがうか。千賀さんもありそうなのよね。そしてキスマイとAvexの相性の良さを感じずにはいられない。

9.Sha la la☆Summer Time

これは『I SCREAM』から繋がる曲だと思っているので、『INTER』を起点に流れ込むアルバムを作るなら外してもよかった。曲のよしあしではなく、単にコンセプト云々のはなし。

10.Camellia(玉森裕太

まさか玉ちゃんのソロ曲の歌詞に泣かされるとは思わなかった。こういう歌詞を歌うイメージがなかったしサウンドもどこか懐かしいJPOPみのある曲を選ぶとは意外。「リバース」の浅見先生にもみえる玉森くんの成長の上昇度を考えると今だから歌える曲なのかもしれない。

11.Baby Love

正統なファンクかと言われると首を捻らざるをえないところもあるけど、あえて言うならこれはキスマイ流ファンクなのでは。ファンクのリズムにエーベサウンドを落とし込むとこういうかたちになるっていう。だけど通常盤にしか入らない曲を選曲するかなあ。ただこれまではボーナストラックという位置づけで通常盤の最後にのみ収録してきた曲をアルバムの中に組み込んでくるってことはありえるかもしれない。ヒップホップが二階堂くんって思ったのも同様の理由なんだけど、個人的には彼にはブラックミュージックのイメージを感じる。通常盤にしか収録されないことがもったいないくらいの傑作。

12.キスしちゃうぞ

このチョイスは宮田さんしかありえない。乙ゲのキャラソンか。これが仮にほかのメンバーだとしたらそのとんだいかれっぷりを愛せるし、予想どおり宮田くんならこのアルバムにこれをぶっこんでくるブレのなさを愛せる。自担の台詞が無駄にイケボでいろいろしんどい。くそまじめな顔でやってるんだろうなーって想像するとまじしんどいかわいい。

13.Life is Beautiful~大切なあなたへ~

非常にたいぴらしいバラードでいいんじゃないでしょうか。”また明日ね。”がよいと思います。去年の「You`re Liar♥」にみえた片鱗とは両極端な世界だけどどちらも彼が抱えているものなんだろう。

14.君のいる世界

緩急の緩の部分がここしかないくらいに、ソロ曲を抜くと11曲目にしてようやく息継ぎの時間がやってくるというかんじ。既存曲なんだけど安易にラス前とかに置かない並べ方が効いてる。

15.Bang!Bang!BURN!

これまでに比べてギターサウンドの割合がなかなか多いこのアルバムの中で、その方向に思いっきり舵を切って疾走するロックに乗ってくるメロディラインが歌謡曲。こういうロックって90年代のJ-POP、J-Rockでよく聴いたのでそのころに青春を過ごした同世代のメンバーが選んでいるのでは?と考えると兄組なんだけど後半のほうはとくに誰がチョイスしているのかむずかしい。ラップのあとにはじまる「移り気な~」からのメロディは神がかっている。

16.r.a.c.e.

そもそも二次オタ的観点で「勝利を君に捧げる系男子」がすきなので、「この勝利をキミに」っていうのがパワーワードすぎてしぬ。ドームならいつもの特効打ちまくりパートにこれを据えてがしがし踊るんだろうな。

17.Tonight

『INTER』とこのアルバムを媒介する1曲っていうのがアルバムの中に入ってより鮮烈になった。”INTER"ってワードの中にどれだけの意味が込められているのかなって考えたとき、まずそのまま”埋葬”だとして、5周年でこれまでのキスマイは一旦完結っていうのもわたしはすきなんだけど、2枚のアルバムの中間点、媒介ってところからとった「INTER」も含んでいるとするとやっぱりこの曲が核だったんだなと思う。うたコンで披露したときに「えっこの年齢層の中これ歌っちゃうの?」って気を揉んだのだが、あそこであれを歌ったキスマイを観て、今年まさかこの曲で紅白あるんじゃ…となぜか急に感じた。なぜだろう。たぶんそれくらい強かったんだと思う。あのMステを思い出す強さに近いもの。あと歌番組で披露するとき、しっかり歌ってると「go in 強引 go win the hard way」の部分のすごく気合いと力がはいってるんだけど若干力み気味で投げ捨ててる感じにもなってるなんかすごくキスマイってかんじはいつも笑えるしすきです、ってなる。

18.Dream on

オーオーセクションきたーーーーーーたぶんこれうちらがやるやつ。壮大なロックチューンで締めるのははじめての試みでは。キスマイ、ロック好きなメンバー多いんだね。ただなーこれいろいろ大丈夫?なんかいろいろ噴き出して大事にならなければいいけど…

 ***

まとめ。

ジャニーズはアイドル集団だし、そこに属するキスマイもアイドル。ずっとむかしはただきらきらと笑って応援歌やラブソングを歌っていればアイドル像は守れたのかもしれないし、それでよかったのかもしれない。そのかわりに、アイドル、というレッテルを貼られてしまうことからは逃れられないことだったと思う。この『MUSIC COLOSSEUM』はそのレッテルをアイドル側からばりばりと剥がして、キスマイのやり方で壁を越えていこうとする気概を感じるアルバムだった。いろいろな先輩Gが切り開いてきたそういう流れをキスマイも踏襲しようとしている。10代が賞味期限だったかつてに比べて長く前線で勝負しつづけることができる時代になったぶん、どこでテンプレートなアイドル像から脱皮するか、どういうかたちでそれを達成し世間に相対していくのかを模索していくにあたり、音楽の存在は重要なファクターのひとつなのだと思う。アイドルといってもやっぱり曲を選んでレコーディングしてCDにして世に送り出す以上、音楽的な展望が必要だとずっと痛感している。キスマイはデビュー年数で言えばまだ若手Gでも、デビューまでが長かったこともあってすでに30代のメンバーが3人いるし、本人たちとしても過渡期に入っていると感じているんじゃないのかなと思える。

もともとキスマイがAvexとともに繰り出してくるサウンドに引っ張られた面も大きく、音楽などとっくにジャンルレスなのだとキスマイに教えられた身としては、さらにステップを上がろうとしていく彼らの姿勢がみえるかぎり、その変革と進化を受け入れ続け一緒に楽しんでいくつもりだ。

ただ、垣根を壊して挑もうとするアイドルのすがたがなるべく多くの人に届けばいいのに、と勝手に願う一方で、そもそも彼らはどこに向けてこれを届けたいのだろう?と思うときもある。ファンはもちろん前提として、そこだけに届けばいいと考えているのか、そうじゃないのか。キスマイはまだそこが見えにくい。明確な舵取りができていない気がする。だからこそもったいない。今以上に届くべき場所に届いていないのでは。そういうことはもちろんすぐにできるものではなく、ある程度年数をかけて向かいたい場所や「こうしたい、なりたい」と望む方向に布石を打ち、経験値を積み重ね、単発や突発的ではない事象を獲得していく必要がある。5年をかけて構築してきたものが去年のアルバムとライブだとしたらあれはそうあるべき到達点に達していたと思う。ここからは10年経ったときにキスマイがどういう存在になっているか、そのはじまりの第一歩としてひとまず彼らが打った最善の一手がこのアルバムだとわたしは感じている。

 

 

MUSIC COLOSSEUM (通常盤)

MUSIC COLOSSEUM (通常盤)