舞い散る日々のなかで踊れ

散財していくタイプのおたく。

おたく的備忘録①フェイバリットマンガオブザイヤー2017

すこし早いけれど、わたしの今年のおたく記録。題して「このまんががすき!2017わたし編」

あいかわらず書店員をしている。去年もこのエントリーで散々書いたから割愛するけれど、今年もさらに下降を辿る出版業界…でもいい作品はいろいろあったよ!ってことで今年も書いている。流行だとかおすすめだとかっていうより、個人的な嗜好に基づいて感想を思いつくままに述べる。

仕事がしんどい、逃げたいなどと毎度のたまわってネガティブをブログ上に吐き出しているだめな奴だけれど、書籍やコミックから逃げたいと思ったことはないし、嫌いになったこともない。なにがいけないか、なにが悪いかっていうのはわかっているんだけど、それを書きだすと自分への呪詛がすごいことになると安易に想像できたのでやめよう☆ただ、ひとつだけ言えることは、今年を振り返って「この時期がしんどかった」とかはあっても、どういう日々だったかほとんど忘れている。これが成長できない原因だなって呆れるけれど、逆になんとか前進できる要因でもある。

万一書店員をやってみたい方が読んでいたとして「しんどいんだ…逃げたくなるくらいなんだ…」って引いていたとしたら、それはちがうよ!本が好きなら楽しいと思う!ま、労働と対価とかそういう話には責任持てないけど…w

ふぇえ…おちんぎんもっとほしいよお…

毎度のごとく順位とかはなくジャンルごとに羅列。ジャンルはざっくり掲載誌に準拠しています。あと最後のほうにちょろっとアニメのことも書いています。

 少年マンガ

 憂国のモリアーティ【~4巻】

憂国のモリアーティ 1 (ジャンプコミックス)

憂国のモリアーティ 1 (ジャンプコミックス)

 

 作者にコナン・ドイルってあるとおり、「シャーロック・ホームズ」に出てくるらしいホームズの宿敵モリアーティ教授(知らなかった)を主人公にした作品。絵がきれいだったのと、裏のあらすじを読んでおもしろそうだったので3巻発売時にまとめて購入。舞台としては「黒執事」とおなじ1800年代後半。階級制度が敷かれた身分差の激しい大英帝国にはびこる「悪しき貴族」を排し、理想の国にするために完全犯罪を計画し遂行していくモリアーティ教授御一行。ちなみにモリアーティとその弟は貴族として生きているけれど、生い立ちとしては貴族ではないのよね。ときとして人殺しも厭わない彼らもまた「悪」でもあるけれど「正義」であることにも変わりがない。ダーティヒーローっていうのは、こう…その…だいたい最終的な局面でどうなるかっていうのがわりと想像できるので肩入れするとわりときついかなって…オルフェンズ*1で学んだ!でもこういう雰囲気やにおいすき…ホームズ通ってきてないからモリアーティ教授が本当のところどうなのかはわからないごめん。もちろんホームズとワトソン君も出てくる。

  ▽ROBOT×LASERBEAM【~2巻】

ROBOT×LASERBEAM 1 (ジャンプコミックス)

ROBOT×LASERBEAM 1 (ジャンプコミックス)

 

 ここ数年のわたしのど真ん中作品である「黒子のバスケ」の作者藤巻先生の新作。でもゴルフ知らない…ごめん。決まった回数よりもより少ない回数でボールをいれると良い、とかホールインワン知ってるくらいの知識…ゴルフ知らないので1巻出たときに買うか迷った。「3月のライオン」を迷ったときと同じ現象…個人的な傾向として、作家買いをしたくともどちらかと言えば内容を重視してしまうので、全然詳しくない分野だと読みこなせるかな…と考えてしまうところもある。が、読ませる展開はきちんとあるし、キャラメイクもあいかわらずいいなあと思いながら今のところは楽しんで読んでいる。三浦鷹山というライバルポジションのキャラは初見で「あおm…」ってなったけど。ただ、どうだろう。ゴルフダイジェストで連載中の「オーイ!とんぼ」や、青年誌の作品とはちがい、まったく存在しないわけじゃないけれど少年誌でゴルフというのはいささか…ってかんじもするし、能力系だとすると黒バスの焼き直しにもなりかねない厳しさはありそう。キャラありきだと女性には人気でやすいけどね…本誌を読んでいないので先行きがわからないけれど、コミックスは売れているほうだとは思う。12月に新刊でるよ!

 ▽ランウェイで笑って【~2巻】 

ランウェイで笑って(1) (週刊少年マガジンコミックス)

ランウェイで笑って(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 

 158㎝だけどパリコレを目指すモデル志望の女の子と、デザイナーになりたいけれど家庭の事情でその夢をしまおうとしていた男の子が、全力で駆けだす物語。努力でどうにもならない部分があること、才能が現実に押し流されてしまうこと、人生にはそうやって選択できないことが往々にしてある。無理、無謀、現実を見ろなんて世の中にあふれているし、実際だいたいが悲しいかなそういうものなのだけれど、それでも全力で走るひとがすきだ。マンガ的?そうかもしれない。現実にはありえないかもしれない。少年マンガだから逆転があるかもなんてたしかにマンガでしか為せない。だけど現実的に無理だから、と走り出す前から足を止めたら「かも」にさえ辿りつけない。逆転があってもいいと思う、それはマンガだから。だけどなにより、結果がどうであれ、その力強い可能性の連鎖がみたいんだわたしは。

もしかしたら、それを見ているまわりのひとはしんどいかも。でもそういうふうに生きてきた、と言い切ることができるひとをわたしは愛しく思う。

スタート地点に持っていくまでの不可能を可能にしたからといって成功するかはまたべつの話なのだろうけれど。

 表紙がほんとうにきれい。これから作中に登場するであろうコレクションで発表される服も楽しみ。

  舞妓さんちのまかないさん【~3巻】

 去年の暮れ、キスマイが表紙を飾ったので購入したサンデーに第1回が掲載されていた。気に入って続きが気になっていたので購入してみたらやっぱりすきだった。舞妓さんになりたくて京都へ来て置屋に入ったものの、才能の面から舞妓にはなれないと言われたキヨちゃんがひょんなことからそこでまかないさんとして働いて、舞妓さんたちのごはんを作っている。やっぱりごはんはいい。ごはんを通して描かれる日々の営みはたいせつ。舞妓さん(花街では舞妓ちゃんと呼ぶみたい)もふつうの女の子だったり、あまり知ることのできない花街のちょっとした情報がわかるのもおもしろい。まえにおもしろそうだなあと眺めていた「ちろり」の作者さんってあとから知って、がぜんそちらも読む気になっている。

青年・一般マンガ編

  ▽とんがり帽子のアトリエ【~2巻】

 最高。順位がないと言いつつ「わたし編」第一位かも。「俺TUEEEEEEE」な転生とか、オンラインゲームを主軸としたファンタジーが流行していた昨今に於いて、それらとは一線を画す超正統派のファンタジー。魔法が人々の生活に根付いている世界で、魔法に憧れる主人公ココはふつうの女の子なので魔法使いにはなれない。だけどたまたま魔法使いキーフリーの魔法のかけ方をのぞき見したことから、幼いころにお祭りで露天の魔法使いから買った道具で魔法を使えることを知る。純粋な憧憬と感動で習得をはじめるココ。けれどそれが思わぬ方向へ事態を動かし、ココはキーフリーに弟子入りすることになる…があらすじ。

某読書アプリにも書いたんだけど、まず作画がすごい!!繊細で大胆な線に愛や夢、ぬくもりが詰まっていて読んでいるとわくわくして、こどものころにそういう気持ちで読んだ絵本のことを思い出す。作中に登場する魔法の道具が素敵すぎるし、「魔法はひとびとを幸せにするもの」であるべきなのがいい。キーフリー先生の他の3人の弟子(魔法使い。みんなキャラがすてき)とともに魔法使いとして成長していく過程を描きつつ、実はココに道具を売った魔法使いはハリーポッターで言うところの「闇の魔法使い」のような存在で、ココを依り代になにかを企んでいるストーリーが並行していて、今いちばん続きが気になる作品。グルメマンガではなくごはんが美味しそうなマンガは名作、と思っているし、けっこうそう言われていると思うけれど、2巻に料理シーンが登場してとても美味しそうな料理が描かれたのでその点からしてももうまちがいない。現状でも相当売れてるけど来年もこういう質の高いマンガにはさらに注目が集まってほしい。

  ▽燕のはさみ【~1巻】

燕のはさみ 1巻 (ハルタコミックス)

燕のはさみ 1巻 (ハルタコミックス)

 

 ここに貼りつけた画像では表紙のイラストの美しい色彩が表現しきれていなくてかなしい…大正時代、モボモガが闊歩する銀座でこじんまりとした理髪店を営む父親とその娘燕のお仕事マンガ。お仕事というか理髪師は職人なので職人マンガ。まず過剰とも言える大正のモダンな文化、空気が好きなひとにはたまらん作品だと思う(わたしだ)

技術を極めるというのは職人としてなによりたいせつなことで、その腕ですべてを為し得ていくには鍛練の積み重ね、そしておそらくそれに対する「愛」「懸ける」という気持ちなんだけど、理髪師という職はなにより相手あってのこと。そこには技術だけでなく「接客術」も大事な要素だったりする。細やかな気くばりや愛嬌、会話、触れ方、雰囲気や空間づくり…顧客がなにを重視し、なにを思い店やひと(ここでは理髪師)を選ぶのかというのは現代にも通じるのでは。そしてやっぱり全力でなにかに懸けて強く進むひとがすき。ジャニヲタにもおなじみ帝国劇場(当時)が作中に登場もします。

   ▽昴とスーさん【~1巻】

昴とスーさん 1巻 (HARTA COMIX)

昴とスーさん 1巻 (HARTA COMIX)

 

 ハルタミックスばっかりでごめん。とんがり帽子の白浜先生もハルタで描かれていた方だった。ハルタは良作多いからしかたがない。表紙をみるとこどもとぼしき男の子がなんと煙草を吸っています。あれ…これすてきなオネショタっぽいけどなんで…!?と思ったのだけれど実際はすこしちがう。これはSF(すこしふしぎ)なジャンルだと思うので、ここで種あかしをしてしまうのもあれだし、気になったかたは是非読んでほしい。作中に流れている空気感の純度が高くてすごく素敵なのです…ふたりのあいだに起こっていることは非日常だけれど、その純度の中で営まれるふたりの日常がまた良い。

あ、ハルタといえばたしか来年のハクメイとミコチ」(樫木祐人のアニメ化たのしみ。

  ▽姉なるもの【~2巻】

急に異色感があるけれど、今年のわたしには私の少年」(高野ひと深/双葉社アクションコミックスの影響で人生はじめてのオネショタブームが到来。

クトゥルフ神話にも詳しくないし、だから「千の仔孕む森の黒山羊」がどういう存在なのかも知らなかったし、作者の方が即売会で頒布されていた元々の作品も存じ上げなかったです。だけど、これよく売れるなーってぱらぱら見て、良さげだったので購入。家族がいない夕くんという少年が、引き取られているおじさんの家の蔵で夏休みに表紙のお姉さん(悪魔)を召喚しちゃったら、大事なものと引き換えに望むままを与えましょう、と。それで夕くんは「僕のお姉ちゃんに、家族になってください」と願うことから入院中のおじさんの家でふたりきりの生活がはじまるわけだけれど、このお姉ちゃん(千夜と本人が命名)かわいすぎます!!!人間的な生活を人間と送り、新しい世界に目を輝かせながら夕くんを可愛がる千夜さん。ことあるごとに元の姿が出ちゃうけどそれもまたご愛嬌。夕くんのモノローグで語る部分やなぜ蔵に魔法陣があったのか、かつて同じように人間と過ごしたことがありそうな千夜さんの描写など、明かされていないことはまだあるけれど、おそらくいつかは終わりがくるであろうふたりの生活がまさに夏の儚さのようで切なくもある。

普段あまり読まない傾向の作品、レーベルなので、まさに電撃的な出会いでした♥

  ルポルタージュ【~3巻】

これはねえ、けっこうすごい作品だと思っている。

若者が恋愛をせずにマッチングサイトにおいて「人生の共同経営者」としての結婚相手を見つけることが主流になっている近未来の日本が舞台。恋愛を経ての結婚がスタンダードだと定義すると、孤独な男女が増える。恋愛というプロセスが果たして本当に良いものなのか?恋愛結婚がブームだった世代の夫婦だって不倫、不仲、DV、セックスレス…面倒や痛みをともなうそれって幸せなの?という新世代に「それなら恋愛飛ばして結婚しちゃおう」が一般化している。そんな共同経営者を見つけるための「非・恋愛コミューン」なシェアハウスでテロ(も日常化している)が起きたところから物語ははじまる。記者である主人公はその被害者たちのルポルタージュを書くための取材の中で恋に落ちる。いや、まずすごいなと思ったのは、2033年が舞台の設定なのだけれど、その頃にはまさにそんな時代になっていそうな気がすること。実際恋愛がめんどうだと思っている若者も多いのでは…

だけど恋に落ちるときというのはそういうすべての理屈を超えているので、一度はじまってしまえば止められるものでもないし、五感が震えるほどのしあわせと同時に痛みや悲しみ、自分の醜さを視ることにもなる。だけどそのぐちゃぐちゃなかんじがまさに生きているということでもある…濃く深くつながる、反発しては溶け合う、そういう生身のコミュニケーションを求めることは時代が変わっても人間が人間であるかぎり絶対になくならないし、どんなかたちにせよ、関係性を築くことでそこになにかしらの感情がごく自然に生まれてしまうことは否定できないのだ。

飛ばして結婚したけど恋人がいる、非恋愛のパートナーシップを前提としていたけど「抱きしめたい」と思う一瞬があった、そもそも恋がどんなものかわからない…いろいろなひと、いろいろな関係、いろいろな感情が出てきます。彼らの立っている時代背景もまた、このさき日本に訪れるかもしれない世相に感じて妙にリアリティがある。

  あげくの果てのカノン【~4巻】

 去年の「わたし編」第一位。SF×不倫マンガ。あらすじ含め去年も色々書いたので端的にまとめると

  • 主人公かのんは高校の時からずっと境先輩がすき
  • 境先輩は結婚している
  • 街はゼリーというエイリアンに襲われていて、境先輩はそれと戦う機関で活躍しているが、負傷するたびに「修繕」という修復によって記憶や嗜好、人格に影響が出る。
  • かのんがすきだった先輩はもうどこにもいないのにかのんは先輩がすき。じゃあすきってなんだ。どこから来るんだ。変わらない気持ちの根源はなんなのか?そもそもそんなもの存在するのか…

うーんあいかわらずぐさぐさ刺してくる。

去年以上に、この作品を読むともうなにがなんだか、どうしたらいいのかわからなくて発狂しそうになる。「すきってなに」とか「心変わり」とかそういう、答が出ないまま言葉の欠片だけが思考の海に沈みこむような問いへの誘いだけでなく、「先輩だけを追い続ける」視座で人生が進み、景色が完結していくかのんの世界に、かのんや先輩を取り巻くひとびとが映す世界が多角的に展開されることによって、その恋がいかに残酷で傲慢であるかということがありありと浮かび上がるからだ。その世界のみで閉じて生きてきたかのんがそれを垣間見てなにかを感じても、彼女はその純粋で透明な凶器であり狂気を捨てない。どうしたらいいんだわたしは。もう正直読むのしんどくなってきた。かのんの恋が近しい誰かだけではなく世界を壊していく。わかっていてもそれでもかのんはその一途な恋を捨てない。誰もが幸せでありたいと願う。誰もが好きなひとに選ばれたいと切に願う。現実がそれを許さなくても、感情は生き物だ。恋こそが人間が一番手懐けることができない感情なのだと思えてくる。

作品自体の露出(著名人のレビューなど)も多いし、米代先生も「セブンルール」に出演されていたけれど、弾けている層がかなり限定されているようなイメージなので、来年こそはもっともっと広がるといいなと願いつつ、刺さる層が鋭角なのかもしれないとも感じる。だめなひとは徹底的にだめだろうけれど、すきなひとには暴力的なまでに魅かれざるをえない作品だと思う。胸の真ん中の奥底のやわらかくて無防備で隠しておきたいところを、むきだしにしたうえでとんでもなく容赦なくぐちゃぐちゃに掴まれる気がしてもこの物語の果てを見るまで死ねないとすら思うわたしは、おそらくこの作品に憑りつかれている。とりあえず安易な実写化で消費されるなんてことにだけはなりませんように…夢でみたんだ。「あげくの果てのカノン」が実写化されるって。

  ▽もしもし、てるみです。【~1巻】

 「花のズボラ飯」の先生の新作。インスタ映えとかキラキラ女子とかそういう言葉が飛び交った2017年のネット社会に疲れてしまっているひとにぜひ。

ネットで簡単になんでもできちゃう、繋がれちゃうミライフォン(スマホのこと)に対抗して通話機能のみを搭載した携帯電話を販売する「もしもし堂」の販売員(てるみさん)、サポートセンターのおしゃべり好きなスタッフや、ユーザーを取り巻く日常まんが。ちょっとえっち♥な場面もあるけれど、時に刺さるセリフもある。

ネットは便利だしネットがないとやっぱり困るし現にわたしも今、ネット上でブログ書いてるんだけど、じぶんの頭や足で確かめなきゃいけないこともあるかもね。せっかく生きてるんだから五感をフルに活用したい所存。

 □少女マンガ編

 ▽僕のジョバンニ【~2巻】

僕のジョバンニ 1 (フラワーコミックスアルファ)

僕のジョバンニ 1 (フラワーコミックスアルファ)

 

 チェロの音っていいよね。

海のある街でチェロを弾く主人公と、海難事故によりその海辺へ流れ着いた少年。ふたりがチェリストになるまでのお話でしょうか。もしくはデュオとして。1巻時点で主人公鉄雄は小学生で、まわりにチェロを弾くような同級生はいなく、皆ゲームやらスポーツやらに勤しんでいる中、孤独に鍛練し東京のコンクールで賞をとるような少年であり、流れ着いた少年郁未(ハーフ)は投げ出された海で鉄雄のチェロの音に導かれるようにして奇跡的に浜に辿りついたという経緯がある。そんな経緯から、郁未は鉄雄の音に魅かれている。この街でひとりでチェロを弾く鉄雄の孤独に触れた郁未はあるとき、チェロを教えてくれ、と頼む。で、これがふたりの少年の今後を捻じ曲げる。音楽の才能というのはおそらく、技術だけではどうにもならないものがかならずあって、もうそれは生まれ持ったものでしかないむごさがつきまとうものでもある。かといってそれがある者がその道に進むとも限らず、関係のない場所で一生を終えることもあるだろうけれど、なんらかのトリガーによってそれが解放されたとき、それまでの環境も人間関係も根底から覆すようなつよさがあるんだろうな…圧倒的に無邪気で無慈悲な才能を前にして、じぶんが戦う武器はなにか。生きる道は。そこにたどりつくこともまた才能のひとつなのではないかと思う。そしていつかふたりの音が共鳴したとき、みたことのない世界が広がるのではないだろうか。

 

 以上12作品。若い作品を中心にしたけれど、あいかわらず続刊が良かった作品もいろいろあった!こう、並べてみるとけっこう偏っているというか、似たようなものあげている気がするな。もともとなのかもしれないし、今年の気分がこうだったのかもしれない。

いろいろなマンガが毎日毎日出るんだけど、というか出過ぎ問題なんだけども、ジャンルもレーベルも多岐に渡るなかでこうやってピンポイント的に「すきだ!」と思えるあたらしいものと出会えるのはやっぱりいいなって思います。マンガが好きなひとはたくさんいるだろうから、みなさんそれぞれがそんなふうに出会えるポイントを来年もがんばって攻めて守って作っていこうと思っている次第です。まあ電子書籍でもいいんだけどさ…でもたくさん並べられたものから手に取って眺めて吟味して…っていうのもよきかなって。

 アニメのほうは大した活動していないので時系列順にさらっとまとめると

▽1月…遅ればせながらユーリ!!! on ICEをプライムで一気観してしんどすぎてしぬ。GWごろまで解釈沼にはまりすぎて深淵をさまよう。

▽3月…機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」2期がいろいろな意味でしんどすぎてしぬ。最近ニコニコにあがっていた「異世界オルガ」*2をたまたま見てしまった。笑った。ネタ化されているけれど本当のオルガは切実なのでよくよく考えるとなんか複雑。

▽3月…「劇場版 黒子のバスケ EXTRA GAME」を観に行き、完結を突きつけられてしぬ。内容としてはコミックで読んでいるので、キセキにおける展開がしんどいのはわかっていたことだけれど、藤巻先生より追加されたオリジナルエピソードがまさかの結末。本当に終わっちゃった。

▽4月~6月…実生活の不調によりあまり記憶がない。なにがアニメ化してたっけ?あーけもフレの大爆発がこのクールかな。観てないですけど、歌はすごく好きだった(ありがちなにわか)

▽7月…「活撃 刀剣乱舞の作画にびびる。映画かよ…ufotable賭ケグルイ大好きだから観たかった。ボールルームへようこそも観たかった。縁あって最近コラボカフェに行ったらやっぱり観たくなった。気になるのいろいろあったのに屍化。

▽9月…突然「劇場版マクロスFイツワリノウタヒメ~」「同~サヨナラノツバサ~」を観返し、シェリルの歌で息を吹き返す。シェリルさんかっこいい…「どうせ死ぬなら舞台のうえよ!」抱いて…

オベリスクがすごく好き。「あと1秒生きるために 魂の背中押せ」のワンフレーズにこれまでどれだけ救われてきたかわからない。今回もだ。

▽10月…3月のライオン」2期、毎週泣きそう。そういや13巻よかったなあ。二海堂くんの力強い命のきらめき…きらめくからこそそこに落ちる影…生きてる、ってかんじで…

だいたいしんでてめんどくさいやつ。ポジティブに捉えるとしたら、それくらいダメージを受ける作品と出会うべくして出会ってるかんじかなあ。今期観るアニメは何本…って見方をやめたので、すっごい鋭角だけど必要なものにしぼってるんだと考えよう。

 来年の情報もいろいろと出てきて、アニメの界隈において気になるのはやはり過去の名作の再アニメ化だったり、初のアニメ化だったり。最遊記とかグルグルが決まった頃に、「いや、これ封神演義とか幽白とかの再アニメ化来ちゃうんじゃないのwそしたらしんじゃう世代が出る」とか笑ってたらほんとに封神演義来てしまった。わたしは幽白もあるんじゃないかって思ってるんだけどね。過去の名作にスポットが当たるのは、視聴率の良かった作品の続編を作るようなドラマ業界とおなじ理屈なのか、それとも今の技術でより世界観の表現をしたいという制作側の熱なのか、それとももっとおとなの事情なのかははかりかねますが、これだけアニメが乱立している昨今に於いて、結局本物だとか名作だとかそういうものしか生き残れないような時代になっているのかもね。とか書いていたら「BANANA FISH」までアニメ化するという。制作ラインナップからしてすでに新たな層への沼となる完璧な体制にも思えるけれど、そういうのは置いておいて、あの作品は時代にはまるんじゃないかなあ。

コミックもアニメも娯楽だから、気楽に楽しめるものであることも必要だけれど、カルチャーであり創作だからこそ、そこに文学性だとか精神性だとか社会性だとか思想だとか、そういうものを深く織り込んだ作品もたくさんあって(娯楽作品にそういうものがないと言っているわけではない)たとえばまんがといえば少女時代に読んだものしか知らなかったわたしの母親のようなひとが「3月のライオン」のアニメを観て深く感銘を受けるようなこともあったりするので、来年はよりそういう作品に浸かれたらな、とか考えている。他人(=作者)の想い、熱、思考を自由に受け止め、自由に考え、じぶんのなかに落とし込む。もしかしたらそれはじぶんのなにをも変えないかもしれないし、それにたいして傷ついたり否定的な考えを抱くかもしれないし、いつのまにか忘れ去ってしまうのかもしれない。けれどいつかそれをとりだしたり、はっとするときがきたり、あとあとじんわりと広がりだしたりすることだってあるかもしれない。表現することは自由であると同時に、どう考え、どう受け止めるかも自由だ。そしてそれを止めることなく考えつづけなきゃ、と最近よく思う。情報と消費のスピードが早い時代。だけれども消費されるというステージに乗らなければ勝負することもなかなかかなわない時代で、そんなふうに胸を揺さぶり、考えること、想うことを与えてくれる作品をわたしはいつだって探している。待っている。

 

 

 

鉄血のオルフェンズ終わっちゃったねってはなし。

最終回が終わって一週間近く(既に現在は二週間経過している)経とうとしている。「3月のライオン」とともに半年間きっちり見続けました。こんなに真面目にアニメ観たのは久しぶりだよ!どちらもかなり心のひだを揺らしてくる作品だったからしんどかったけれども。ちなみに2クール目のはじめあたりでユーリも一気観したからそのころ精神的ダメージすごかった。

思えばオルフェンズを観始めたのは2期直前にキスマイの宮田くんが出ていた特番を観て魅かれて1期を観たことからなんだけど、本当におもしろくて夢中になった頃のことを思うと、ここ最近の月曜日はいつも鬱、みたいな展開になるとは予想できなかった。わたしはガンダムに明るくないので、こんなもんやでって言われたらそうなん?としか言えないんだけどそのあたりはガノタの皆さん的にはどうなのでしょうね。

一週間経つんだけど今も虚無&虚無ってかんじ。とりあえず完結するまでは多くは言うまいって思ってたけど完結したから、なんとなく思ってることを書いてみる。

うーんと、まずは、鉄華団としてはなにも引っくり返らないまま終わったなあ。

一視聴者としては、どこかでかならず一矢報いる瞬間があると思っていたんだけど、なかった。ただのひとつもなかった。わたしがそれを信じてたのはたぶん、シノがダインスレイヴを打ち込もうとしたあたりまでかなあ。あれが完全に成功してラスタル&イオク様を葬れるとは思っていなかったし、シノヤマ(あえて書いていく)による露骨なフラグが失敗の予感しかさせなかったし、教科書どおりのフラグ回収を鉄則としているようなオルフェンズのことだから、まあ予想は容易だったけど、なんらかの楔にくらいはなってくれればって願ったけどそうでもなかった。このあたりから活路を見出す→失敗で誰かの死か損害のループになってきて、こちらとしても「こんな作戦あるぞ」とか「金あるぞ」とか言われてもあーはいはいこんなうまくいくわけないからどうせぬかよろこびに終わるんでしょって気になってきて、もう絶対悪いことが起こるのはわかるからストレスマッハってかんじで、結局そのとおりになって救済されないストレスがそのままストレスになり月曜日に鬱となって襲い掛かるっていうのがパターン化。まさにアニメ的なご都合主義はいっさいなくひたすら現実のやるせなさを見せてくるアニメを観て現実に立ち返っていくのはわりとしんどいよね。

1期の観たときの感想の記事を読み返すと、全滅ENDになりそうだったのにラストぬるくない?あんなに都合よくいく?とか言ってるので、まあいつのときも視聴者(てかわたし)ってやつは勝手だなと。でもあの1期のラストがあったからこそ、これは生きていく物語だと思ったんですけどね。いのちの糧は戦場にあるというから、生きるために戦うんだって思い込んでた。だけど戦うんだからそりゃ死もあるよね…それしか前に進む方法を知らないんだから至極当然か…

ただ、引っくり返せなかったとは言ったけど、最後の希望だった地下通路は生きていたし(実は使えませんでしたってなるんじゃないかってわりと本気で思ってた)大半が生きてクリュセに到着してIDを書き換えて新しい人生を踏み出せているのはある意味引っくり返ってるのかもしれない。

今、全話リストを眺めつつ、さっくり振り返ってみると、いちばん悲しかったけど二期でいちばん好きな話は第40話「燃ゆる太陽に照らされて」かな。あんなに二次キャラを憎むことがあるのかっていうくらいイオク様が許せなくても、姐さんの「輝くためさ!」にしびれすぎて泣いた。名瀬さんが跡目争い?というか抗争で退場するかもってことは濃厚だったから覚悟もしてたし、つらいけど40話はそれも含めてストーリーとしてすごくおもしろかったなあと今思う。 

ただラフタは鉄華団に入るもんだと思ってた。愛のために恋を選ばない、みたいな選択の果てにあんなことになるなんてショックの極みだったんだけど、ラフタじゃなかったらアジーさんだっただろうし、どのみち道筋は変わらなかったんだろうな。

特番で号泣していた向さんを見て、死んじゃうのがラフタだったら最大に凹むなあと思ってたんだけど、そのとおりになってしまった。

じぶんのツイッターを見返してみると38話のときに「オルガが一生後悔する選択になるんじゃないか」みたいなことをつぶやいている。なにを指してるのかは今となっては定かじゃない。おそらくマクマードさんに盃を返したことと、火星の王の話について名瀬さんと話しているところ、MA戦で三日月が足をもっていかれる結果を招いたことまとめてだろうな。一概にオルガが悪いってわけじゃないんだけど、ユージンが言うようにぜんぶ背負っちゃってがんじがらめになってるというか…41話でマクギリスにすがるみたいに「使い道はあるか」ってオルガが言ったときにはもはや「これ精神的自殺だろ…」ってやばみを感じたし、ユージンが「考えはおなじなのか」って問うたときに「そうだ」って言ってたのやけくそ感否めなかったよ。そのあと「名前がなんでも場所がどこでもバカ笑いしたい」って腹を括ったのは良かったけど時すで遅しでもう時代の大きなうねりに巻き込まれていく(マッキーが意図的に引いた引き金とはいえ)しかなかったように感じる。オルガが悪いわけじゃなくて、もうどうしようもない流れ。そういうのって歴史の中でも何度も繰り返されてるやつ。なんかもう新撰組みたいだなって。あんまりくわしくないし薄桜鬼と燃えよ剣の知識で言ってるごめん。

こういうかたちで敗者として描かれるのはいちばんきつい。正義と悪じゃなくてほんとに勝者と敗者でしかないから。結果的に敗者となった鉄華団の誕生から見てるわけで、生活があって家族があって生きていくための戦いがあって守りたいものがある、それを4クール分知っているからこそのやるせなさね。

つーかオルガなんてあの終盤でモブにパンパンされたんだぜ…あのオルガ・イツカだよ!?ほぼ主人公だよ!?任侠ガンダムって言ったってそんな退場ある???殺せばいいってもんじゃない。てっきりノブリスが指示したのかと思ったんだけどモブが勝手にやったとか…忖度かよ…というかなぜ防弾チョッキを着ないのか。なぜ鉄華団ブルゾンを着ているのか。ねえ国際指名手配されてなかった…

トーリー上全滅ENDでも仕方がない状況になってたしそれならそれでもいいんですよ、オルガが死ぬこともべつにいい、だけどそれでも見届けようってこっちが覚悟して作品に向き合えるような描き方ってもうすこしあるんじゃない?ってあのときは本気で冷めた。殺せばいいってもんじゃない(二回目)たしかに現実的に人は死ぬときはあっけなく死ぬし、いくらリアリティを描こうとしているとしてもやっぱり物語を作っている以上多少はね…現実にありがちなことを日常話でない物語に落とし込むうえでうまく昇華できていない気がした。

まあざっくり言えば生き抜いた結果なんだろうな。果たすべきことを果たしてそれぞれがいのちを使いきったんじゃないかと思う。これから新しい道を歩いていくメンバーはきっとまだ道半ばで、これから果たすべきことがあるってことなんじゃないのかなあ。と言ってしまうと三日月と昭広は戦場でしか生きられなかったってことになっちゃうから悲しいんだけど。だけどバルバトスもグシオンも最期の最期までほんとうにかっこよかった。

いのちを使いきるってけっこう自分の人生の命題でもあって、よく人間は脳の能力を10%も引き出せないみたいな話を聞くけど、それを11%にするくらいにはもがいて生きて死にたいと思っているので、わたしの解釈でしかないにしろ、そのへんは響いた。

響いたと言えばライドの選択も。ライドが進みだした人生はオルガが身を挺して守ったものだし、復讐なんて誰も望んでも喜びもしないって本人もきっとわかってるんだろうけど、落としどころがつけられないからああするしかないんだろうな。行動はべつとして、その気持ちは世間のスタンダードにおける善悪や正誤じゃはかれない気がする。

鉄華団に関してはそんなかんじかな。あ、あとユージンはクーデリアの右腕になってたけど、彼に関しては生き残るだろうって「見えない明日で今日をすり減らすんじゃねえ」って台詞で確信した。2期中一番すきな台詞。おやっさんの「考えることやめんじゃねーぞ 」もすき。たぶん道をわけたのはこういうところにあるかもしれない。

いまからNLの話に触れるので嫌な人ごめん先に言っときます。

あのあとユージンとクーデリアってなんかないかなって。いまのかたちがクーデリアにとってはしあわせだとしても、べつのかたちのしあわせの可能性もあっていいんじゃないかな。クーデリアはアトラも三日月のこどもも守るって約束してたしそうしてるみたいだけど、そんなクーデリアを守ってくれるひとがいてほしい(個人的願望)こっそりミカクー勢だったんだけどさ…途中で撃沈したからさ…まあみんな愛、みんな家族でいいんだけどね。

クーデリアは成長したのに二期ではほぼ蚊帳の外になっててクー様勢としては残念だったし「わたしだって鉄華団の家族だったはずなのに」ってつぶやくところは切なかった。賛否あるみたいだけど3人でハグしあっているところわたしはきらいじゃない。まあ「クーデリアさんも三日月の赤ちゃん作りましょう!」はちょっとあれだけど「約束ってあるといいなって思って」って三日月が言うのは意外だった。でも約束って残酷でもあるな。

結果的に三日月はこどもがいても遠くにいってしまったけど、彼なりにそれによって繋げるということができたんじゃないのかなと。世代という意味でも人との関係という意味でも。とはいえオルガありきの人生だった本人は無自覚なんだろうな。オルガとの出会いがじぶんが生まれたとき、最後は「とっくに辿りついてた」だし…そんなんほんとうは「なに言ってんだおめーこれからだよ!」って肩揺さぶりたかったけどさあ…

ここまで書いて下書き保存しているうちに、Twitterでクーデリアとアトラが同性婚していたという事実をトレンドで知って頭抱えた。

同性婚があたりまえの世界ということ自体はいいんだけど、それならシノとユージンの回想でユージンが「えっそういう?」って言ったのはなんだったんだ。認められてる世界なのであればそこでユージンが疑問を呈する描写はおかしくないか?シノがおっぱいに埋もれて死にたいって言うほど女好きだったから?

もっと言えば怒りの中で生きてきたマクギリスってなんだったの???だからこそのあの精神的な成長とまっちゃってるマクギリスが生まれたのではないのですか。

ユージンの台詞もそうだし、マクギリスの設定からしてまさかそんな世界だなんて思えなかったんだけどね。思い切り男女の恋愛だの結婚だの描いてましたやん。なんなら今、名瀬さんのかっこしてタービンズ率いてるアジーさんはみんなと結婚してるんですか???ってはなしにもなってこない???(こない)

あのあと認められたというならアッハイってかんじだけど、まったく匂わせもしていなかった情報を後だしされても困惑の極みでしかない。

そうそうそのマクギリスなんだけどさ~~~彼って一期のときあんなキャラだったっけ???目的を果たすために危険因子を入念に排除して何手先まで理詰めしていくタイプのキャラだと思ってたのわたしだけ????

バエルっていったいなんだったんだろう。バエルとかアグニカとかあんなに口にするからなんらかの特別なすごい力があるんじゃないかって思うじゃん。バエルを動かせたのわたしだけ、って言ってたけどそれGHでは忌むべき阿頼耶識つけたからそりゃ…象徴を手に入れてバエルの威光だけで押し切ろうとしてたなんて冗談きついわ~~~~~でも悲しいよね。本当にこどもみたいだもん。いや、わかるんだ。マッキーの言ってること自体はわからないわけじゃない。かたちのあるものや目にみえてわかるものだけ(力の強さとか)を正しいと思う、それだけが信じられるってこととか、誰にでも平等に権利が与えられる世界っていうのもわかるんだけどさ…だけどマッキーがやったのは革命じゃなくて革命ごっこなんだ。怒りによってのみ突き動かされる信念って激しいけどただそれだけなんじゃないかって思う。感情や力(べつの側面からすると暴力)だけじゃ世の中変わらない。知ってた。

でもマクギリスのこときらいになれないし石動さんのこと愚かだなんて思えない。持っている者は持っていない者のことはやっぱりわからないんじゃないかなって。アインはちがったぞって言いたいんだろうけど、そもそもガエリオさんそういう階級の出身者アインくらいしかよく知らないでしょう。たまたま出会ったアイン、そのアインもたまたま上官がクランクニ尉のようなひとだったからあんなふうに生きたけど、ちがったらそれこそマクギリス革命軍にいたかもしれないし、じぶんが知っているものがそうだからすべてがそうだというわけではないと思う。それでもこのあたりは出会いもすべてそのひと、そのひとの生き方次第、というかんじなのかな。だけど確実に搾取される層っていうのは存在していて、その目線で物語を観ているわけだからやっぱガエリオまぶしすぎる…正しすぎてつらい。

尊ぶべき感情を説いていた彼は誰より主人公らしいし、すこし前のアニメなら当然主人公に据えられてたと思うんだけど、それだけでもまたこの世を渡っていけないのが事実だったりする面もあるので、生き方それぞれ正解はないのでは、と多面性を見せてくれる群像劇らしいところはすきだった。

 ラスタルジュリエッタに関しては必要なことをあたりまえにやっただけ、って認識なんだけど、もうすこしラスタルおじさんの内面を最初から小出しにしてくれればここまでストレス溜めることなかったんじゃないかなあ。あえてそうしていたのかなあ。なにを言おうと、勝ったほうが正義でしかないからもういいけど、ダインスレイヴ乱発はどうかと思うよ!濁の部分があまりにもきれいに隠遁されすぎじゃないかとは思うよ!ただクーデリアや残った鉄華団もそれはおなじなんだろうし、現実世界に於いても非常によくあることとして理解している。

 これどうすんの!畳めるの?ばかなの?(小声)ってなったことも道中ではかなりあるし、手放しで最高の作品だよ、とはもう言えないんだけど、すごい作品だったしいい作品だということは確かなんじゃないかと。ただもう夢も希望もあったもんじゃねえな!二次元ってなに?ってくらい現実的な作品で、今の世の中に置き換えても「ああ…」ってなることも多くてしんどかったな。現実はなかなか救済がないから二次に夢を見たいし力をもらいたいんだけどね。エンタメにむかって現実ってこんなもんだよね、ってつぶやくのってなんだかむなしいじゃない。

オルフェンズが言いたいことってなんだったんだろうね。思い浮かぶことって言ったら

・利用される人間よりも利用する人間たれ

・そのためには夢や理想よりも現実を語れ

・現実を語るにはそれなりの、しかも極端に偏りのない勉学と知識が必要である

・清濁を併せ飲むことが社会で成功する第一歩

とかなんだけど。うん、まあそれもそうなんだろうけどさ。なんかね。

 

 

 

ユーリ!!! on ICEは沼。知ってた。

は~~~ついに観てしまった~~~「転がり落ちる未来しか見えないからやめる」とか言ってたけど、しごと逃げたすぎて「なんかくれ…あたらしいときめきくれ…きれいなやつ…」と思ってプライムで一気観しちまった~~~!!!

どうも。どこにでもいるジャニヲタ兼アニメ好き、いくつになってもヲタ卒できない昭和生まれのBBAです(金なら出す)年甲斐もなくヲタしててごめんなさい

さて……冬アニメも始まっているなか『ユーリ!!! on ICE』観たよ!!放送も終了して今更だけどさくっと感想書きます。さくっとで済むのか。結論から言うとこれはおそろしい沼です。

フィギュアについて専門知識は皆無で、わかるのは武内直子先生の「THE チェリープロジェクト」という作品で覚えた技の名前くらい。「デススパイラルーーー!?ひとりでーーー!?」ってかんじの超次元スケートマンガです。あとアルベールビルだったかな、伊藤みどりさんに幼いながらに憧れて、あんときのフリーとエキシはテープが擦り切れるほど観て畳の上で真似してました。半回転しかできてないのに「トリプルアクセルっ!」とか言ってな。傘持って出てきてレインコート脱ぐやつ好きだった。25年前?こわい。

まあそんなかんじなのでプログラムの構成や難易度、大会の仕組み、わかる人にはわかるよっていうフィギュア的小ネタとかはよくわからないまま観ていました。そういう詳細がわからなくても勇利のフリーは毎回泣けるところまで届いてくるすごさ…!特に最後のステップのところとか。なんならそれぞれの選手がそれぞれの感情を乗せて滑るからどれも泣いた。第6話の中国大会でレオくんがSP中に「音楽に出会わなければどうやってこの魂を勇気付けていただろう」って言うところは泣きながら「それな(語彙力紛失)」しか言えんかった。

プログラムの曲はほぼオリジナルらしいですがこれすばらしいですね!!勇利のフリー曲『Yuri on ICE』とヴィクトルのフリー曲『離れずにそばにいて』はずば抜けて素敵だと思うのですが、JJやピチットくんの曲も好きだしユリオのピアノ協奏曲…!!ピアノ協奏曲を今時アニメオリジナルで作るなんてもうおどろきでしかなかった。あ、でも地方大会で誰かがメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で今滑っているのかな?って場面もあったし、いくつか既存曲も使われていた。しかも第三楽章。世界でいちばん好き。

オリジナル曲のサントラ軽率に買いそう。どんだけエイベたんに金を落とせばいいのか…(当方キスマイ担)

 

 

 イメージとしては、ヴィクトルをコーチに迎えて日々の練習をメインにして勇利くんが成長していくお話かなと思っていたけれど、5話からもう公式戦がはじまって、GPシリーズに至っては選手皆のプログラムに時間を割く作りでもうびっくり案件。そこまでちゃんと観れるなんてまじかよ…作画班生きてたんだろうか…ともう放送終了した作品の心配してしまった。大きなお世話だった。勇利もユリオも確かに話数ごとにどんどん変わっていくのだけれど、ベテランと天才っていう設定だし、新人が努力して初めて大会を目指すって話じゃないからか、超スポ根感はあまりない。だけど感情が表現に乗るスポーツだからなのかなあ…このアニメすげー泣けるんだよね。正直、騒がしくなっている界隈のところから断片的な情報を拾っていたせいで誤解していたんだよわたし。サービス精神旺盛系のやつなのね、って思っていて、まーた旬ジャンル爆誕してしまうのかーみたいな。

サービス精神旺盛な面があるのは否めないし、ちょっとやりすぎじゃない?とは思うんだけど、そんなことよりも作中で一貫して「愛」と呼ばれている勇利をとりまく感情がもはや「愛」でしかなかった。しかも分類も名前をつけることもできない愛のかたちってかんじ…とくに勇利とヴィクトル。今までこういう人間関係を人生で築けたことがないって思ったらずどーんと来たもの。自分はわりと勇利に似ているところがあって、普段から自己嫌悪に陥ってばかりなんだけど、こんなんじゃだめだって思わせるなにかがこの作品にはあったんですよね。

わたしは元々フィルターもちなので(なんのかは察してください)ニヨったり「は?????????????????」からの墓ってなることがないって言ったらそれはうそです。でもそういうのを通すのが申し訳なくなるくらいの純度とでも言えばいいのか…観終わった日からずっと周りの人のことやこれからどうするべきかということを考えてしまう。色々と揺さぶられすぎてちょっとどうしていいかわからなかった。安直に考えてたところに爆弾くらったかんじ。

 

ちなみに個人的神回トップ3は以下になっております。

1.第7話

6話と合わせて一番泣いたかもしれない。勇利の「僕が勝つって僕より信じてよ!!!」からのあの驚愕のフリー。中国大会がいちばん好きかも。終盤立て直して3-3決めたときのヴィクトルの神的にかわいいびっくり顔も最あんど高だし、フリップ飛んでフィニッシュに向かうところにかかってくる実況もすごく良くてエモすぎ泣いた…ってなっているところに最後のあれ…誰かー!恋(星野源)持ってきてーーーー!!!

ちょっと違うかもしれないけど、逃げ恥の公園での「ハグしていいですか?」の場面みたいだなあと。溢れすぎて言葉にならない感情の伝え方というか。勇利とヴィクトルはハグは四六時中してるからこれしかない。

ここまで言ってると後づけにしかならないけど、ここから本当の意味で選手とコーチという関係が始まったんじゃないかと思った。

2.第12話

最終話。言葉にならない。これが桃源郷。と言いつつそのあたりは後述します。ファイナルのFSはどのスケーターもすごく良くて、勇利はもちろんなんだけど(送り出したときに一瞬引き留めるような動きをしたヴィクトルの手から離れてリンクに向かう勇利がフィニッシュで指を伸ばした先がヴィクトルっていう描き方はやばみが過ぎる)オタベックのあの語りからのユーリという流れが圧巻だったし、ユーリの気迫と涙~~~;;;;戦う人だ…それに当日の朝のユーリとヴィクトルのやりとりに詰まってるすべてが好き。

3.第9話

ユーリの優しさが滲む回。ヤンキーだから口悪いけどめっちゃ優しい子だし、勇利の存在や長谷津でのできごとはユーリの中ではすごく大きかったんだなあ思えてすごくアガペーな気持ちに。例の空港でのシーンは、ん???って引っかかったところのほうが大きかったし、勇利からは悲痛さが漂っているし、マッカチンの件は良かったけどたぶんふたりに関してはここから大きくずれちゃったのかなあと最終回まで観た今となっては思う。

あと特筆したいのは10話。ここまで観るとこういう設定でこういう話、と自分の中で組み立ててきたものが一気に壊れてがらりと印象を変えるので、1話からまた観るしかなくてほんとしんどかった;;;;;;(観た)4話の「コーチを引き受けた」に強烈に違和感あったんだよ…ヴィクトルくらいになると、誰もがそう望んでると心の中で思ってると思ってるのか?皇帝ゆえの傲慢?みたいな。その違和感の正体の10話で解き明かされて、勇利もあんなに親しげに声をかけてくれるクリスがいるのに、ピチット君以外親しいスケーターはいませんって顔してるのなんで??ってずっと疑問だった答えもわかった。叙述トリックかよ…10話の特殊ED最高でした。抜群の笑顔でダンスしている画像わたしにも送ってください。見せ方がうまい…普段はインスタでこの回はアプリ起動からのカメラロール…

教会の一件はね。うん、あの、勇利の発想がアメイジングすぎてたおれた。誇張じゃなくてフローリングに。気持ちはわかるよ…拠り所としてのかたちあるものに行き着きたい気持ちはわかる。ただそれはちょっとって…言われたらどうしようって迷いもなくそこに行き着いて実行に移す勇利おそろしい子…!でもヴィクトルは受け止めるって知ってた。

 

9話とかこの10話〜12話冒頭とかがまさにそうなんだけど、勇利の心の声は観ている側にはずっとわかるし、引退の時期のこととかもああこう思ってるんだなっていう前提で観てるから勇利の言葉や行動に矛盾とか突発さを感じないけど、対ヴィクトルになったときの、あれ、このふたり画面外でこの話したのかな、ふたりのあいだでそういう認識になってるんだよね?それを踏まえてこうなってるんだよね?いや、もしかして違う???あれ???なにこの状況は!?!?!?ってこともいくつかあったし、ふたりだけじゃなくユリオも含めて、この表情や描き方はどう解釈したらいいんだろう…?ってことも多くてこっちが大混乱、まって、わかんね〜〜〜〜どこでどうなった…?なにこれどういうこと???ってなってこんなにも頭の中がカオスになったアニメひさびさかも。それなんて人生。やっぱり言葉で伝えなきゃだめだよね…勇利の行動見て自分も反省した。自己完結しててもなんも良くならないし逆に相手も自分もしんどくなるばっかだ。それに正直未だに解釈しきれないところも真意を測りかねるところもあるんだよなー

とはいえ、ふたりがたどり着いた場所があの12話ならもう泣くしかなくない?????離れずにそばにいてデュエットver.…まってしんど…理解と理性が追いつかな…しねってこと????こんなんどうすればいいの????まじでKSK*1なんだけど!!!!!あまりのことに頭沸騰して謎の怒りすらわいてくるんだけど!?!?!?!?夫婦を越えていけ…

実はエキシでこのプログラム選んでましたってこと自体が衝撃だわ。中国大会のときもおそらくソロだろうが画面外で滑ってたってことですよね…でもよくよく考えたら第一話で完コピしてる動画めっちゃ拡散されたんだからある意味皆が一番観たいプログラムでもあるだろうし、ふたりの始まりの曲だから自然なことかもしれない。

最終話のこのエキシちょっと引くくらい美しくて、もしかしてこの景色この世で一番美しいんじゃないかって白目で思うほどだったんだけど、この映像そのままDVDに収録できるのかなー修正入るのかな。噴出しているらしいいくつかの問題はどうなるんだろう…

 

キャラもすごく良かった~~~;;;;勇利の家族をはじめとする地元の人たちがとても暖かい場所だったり、スケーターたちのキャラの立ち方も常軌を逸している…JJ(CV:宮野)とか最高じゃない。名ゼリフ吐きまくってた。「翼の折れたJJ」とか「こんなんじゃ愛が足りねーよ!!!」とか。あと一見関係ないようにみえる他の選手たちのプログラムやエピソードがストーリーのフックになっていたりするのが憎い。

PVだけ観た段階では、ユリオ気になってたけど、終わってみたらヴィクトル・ニキフォロフ一択だった。これまでの推しキャラを考えればヴィクトルしかなかったと今では思えるけど、元々金髪の美形に弱いんですよね。でもユリオもすっごいいいこだったなあ。なんなら勇利やヴィクトルよりしっかりしてる。あの強さ、あの感覚、察しの良さよ…ヤンキーなのにおじいちゃん子かわいい。カツ丼ピロシキんときの笑顔天使か。内山くんもすんごい良かったです。

1話と12話どちらも美しすぎてしんだし、とくにFSのほうのあの序盤のシットスピンのあたりなんて心臓抉られそうになるからもし二期があったらヴィクトルのまじスケーティングをみたい気持ちはあるし、実は枯渇して空っぽで「離れずにそばにいて」を踊っていた人が愛や人生を彩るものやことを知ったらどんな風になるんだろう…って考えると震えるけど、個人的にはヴィクトルが皇帝の座から陥落するのをみたくない気持ちもあるので、完結しない物語ほど美しいものはない、でもいいかなと思っている。「ワールド5連覇くらいしろ」って言ってるから本人はいつかその時はくる、と覚悟しているのかもしれないしそんなことは大事じゃないかもしれないけど。

というか11~12話のとき本人的にはどういう風に考えているんだろう。最初は単純に勇利を見ているうちにスケートへの情熱やイマジネーションが戻ってきたところにユリオのファイナルのSP見て火がついたのかと思ってたんだけどもしかしたらそうじゃなくてあの後ろ姿は世代交代の時期だって悟ったのと、これまで自分が一番だと思っていた人がよくよくいろいろなスケーターの演技を客席から新鮮な感覚で見てみたらいろいろな発見があることを知って、これからもしばらくは勇利見る予定でいるからコーチ業や振付師への転換に傾いていたのか…基本的に勇利目線に添って描かれるから、前者は勇利がそう感じたってだけかなあ。そもそも彼はヴィクトルをロシアへスケート界へ返すべき人だと思ってるし。このへんが心の動きが未だにはっきりわからないんだよね。わたしがバカで深みのない人間だからかもしれんが。

でもやっぱり12話の「競技者としておもしろくない」の言葉を額面通り受け取ると、やっぱりヴィクトルがスケーターとして蘇生したんだろうな。で、ヴィクトルがプログラム的にも点数的にもやりきった感で満ちている勇利を引き戻すことを託したのがユリオって解釈でいいのかな。ヴィクトルの復帰じゃ喜ばせることはできても戻せないって悟ったってことだよね…?

元々勇利はヴィクトルを崇拝していたスケート人生だし『Yuri on ICE』滑るときにもヴィクトルのことしか考えてないからわかるけど、ヴィクトルのほうももはや勇利のいない世界に意味などないくらいの勢いで「離れずにそばにいて」なんですね…なんだろう共依存?いいね!!そういうの大好きだよ!!!!ちがう、そうじゃない、あ~~~~~自分のフィルターが憎い。あえて名前をつけるとしたらソウルメイトとかそういうかんじかなあ。つーか記憶消してまっさらな状態でこの作品もう一回観たいです。

リアルタイムで追いかけた方々すごいね!?わたしこれリアタイしてたら一週間考えすぎて心臓もたなかったかもしれないし、放送日のたびにしんで繁忙期乗り越えられなかったかもしれない。逆に乗り越えられる糧になる可能性もあるけどこれはたぶん毎週抜け殻になるやつ。結果良かった。

ほんとあんまりめんどくさがってないで真面目に向き合わないとだめですね。「踏み込んだぶんだけ踏み込んでくれる」に目が覚めた。

は~~~円盤買お。仕事しよ。

 

*1:結婚しろください

2016年ヲタ的備忘録②書店員によるマンガ界隈のこと。

前回の続きのようなもの。今回はマンガとかちょっとアニメとか。

 本が売れない、書店が消えていくという話はよく聞く。実際むかしに比べたらそうなのだろうと思う。いろいろな趣味がたくさんある時代だし、たぶんもう本は一大娯楽ではなく嗜好品になったのかも。

電子書籍インターネット書店の台頭で書店が…というのもよく聞く。これはもう時代の流れと世相というほかない。もちろん諦めたくはない気持ちも存在はしている。

電子書籍で連載しているマンガが単行本化してレーベルや作品がどんどん増え、店頭の棚やスペース開けに四苦八苦するときに、本はスペースを取るから、ある程度自宅にそういう場所が確保されていなければ増やし難いものになっているのではないかと最近よく考える。実際じぶんも大きい本棚を買い直したけれど部屋はさほど広くないからこれ以上増えたらどうすんだ状態。土地も高いし家賃も税金も高くなっているのに給料はあがりにくい昨今、広い家や部屋に住むこともなかなか難しい。だから断捨離がブームになったのもわかるし、電子書籍に移行していくのも納得かも。所有が難しくなっている時代というかんじ。もっと単純に趣味にがっつりお金を使えないという景気の悪さもあるのかな。消費しろ物を買えと言われたって元手がなきゃねえ、とはわたしも思う。

インターネット書店に関してはもう在庫量にはかなわないし、出かけなくても買える店頭では買いにくいものも買えるとか大量に買っても持ち帰る労力がいらないとかもうメリットだらけじゃない!と思う。デメリットは今すぐ読みたいが叶えられないことくらいだが、〇ライムみたいなサービスもあるからどんどん垣根がなくなっている気がする。

そんな業界でもなんで諦めたくないなあと思いつつ書店員をしているかというと、だいたいが書籍やコミックをあいしているという以外にない。個人的に本は熱量そのものだと思っているので、とくに紙でできたもの、紙の匂いがしてインクで印刷してあって手に重みが落ちるものであってほしい。単なる個人の矮小なこだわりのはなしで、電子書籍がそうじゃないと言っているわけではない。

文芸作品にしろ実用書にしろコミックにしろ、作者の方がいのちを削るかのごとく書いて熱量をかたちにしたものだと思うし、雑誌だって情報をくまなく届けるっていう熱意にあふれているのだろうし、出版社に勤める方たちもきっと良い作品を世に送り出したいって思っているのだろうなと考えているので、すごく熱量がこめられたそれをだれかの手に届けるというもたぶんこの仕事が楽しいひとつの理由。下がり気味とはいっても、まだまだ書店に足を運んで購入してくださる方はいらっしゃるので、それを必要としているだれか、もしくは必要とはしていなかったんだけどたまたま書店で出会ってしまっただれか。書店は末端だからこそ届けているという感覚がつよい。それに偶然の出会いなんてインターネットではあまりない店頭ならではのつよみだと思うし。むしろ即行性とそれが書店のだいたいの存在意義なのだろうとじぶんは感じているし、そういう出会いを作りたくて日々仕事をしている。

 

前置きが長くなってしまった。

 

もともとマンガは好きなのだけれど、なんというかまあ、趣味というより今は商材なので、火がつきそうだとか、棚に差すより積むほうが目に止まりそうとかそういう観点で見てしまうことが多くそこが悩ましい。正直個人的な嗜好からすれば読まないジャンルでも「これは売れるべき」と思うと推すし…好きなのは変わらなくても、むかしのようにただ純粋に探すってことができなくなっているのは感じる。そんな膨大な作品群の中でも個人的に今年印象的だった作品やできごといくつか。ランキングとかではない。

 

BLEACH(〜74巻 完結)

昨年から長期人気連載が軒並み終わっていくジャンプから今年、大好きな作品がついに去ってしまった。さみしい。だけど最後はなぜあんなに急ぎ足になってしまったのだろうか、というのは少々疑問。少なくともまだあと最低5巻分くらいはあるのではないかと思っていたので吃驚である。まあもっと読みたかったっていう未練かな…ん?これはスピンオフネタ?って思わせるような締め方ではあったのでまさかBLEACH2ndある??

空白などと揶揄されがちなあれを行間だと思っているくらいにはセンスに惚れこんでいたところも大きいので久保先生ご本人が描くなら読みたさある。が、今はまずお疲れさまでした。近々の巻では71巻収録のマユリとネムの件が最高だった。

BLEACH―ブリーチ― 71 (ジャンプコミックス)

BLEACH―ブリーチ― 71 (ジャンプコミックス)

 

ジャンプコミックスと言えば、春頃に『暗殺教室』の特典で実写映画の写真を使用したしおりをお渡していたのだけれど若い女の子から「これの山田くんバージョンないですか」とよく聞かれたのがジャニヲタ的には思い出に残っている(リバーシブルだったので、殺せんせーの面をひっくり返すと渚役の山田涼介くん)

 

・かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳心理戦~(〜3巻)

めずらしくラブコメ読んだ。両想いなのに自分ではなく相手から言わせたいがために繰り広げられる男女ふたりの脳フル回転の思考の読みあい、心理戦や舌戦がアホくさいしギャグかよなのだけれどもついニヨニヨしていした。常人以上の思考力のせいでななめ上をいってしまったり、恋愛においては初心者レベルでぽんこつだったりしてお可愛いこと…ふたりを取り巻く書記の藤原さんやかぐや様の近侍である早坂さんもかなり良いキャラクターだし、さらっと読んでわらえる軽さが気に入っている。この手のジャンルってかネタは引き伸ばししすぎるとおそらく失速するのでそのあたりが来年どうなるんでしょ。

www.s-manga.net

 

・不滅のあなたへ(連載中)

今年の夏に映画も公開された『聲の形』の大今良時の新連載。誰かによって世界に投げ込まれた「球」が物体を写しとって変化していく過程をその誰か(神?)が観察しているような1話からはじまる。未読の方はとにかく試し読みの1話読んでくださいとしか。姿は写し取れてもそのものにはなれないし、何も知らない球が出会いや経験を通して様々なものを獲得していくのが本筋ぽいけどそうしたら不死である球は最終的にどんな存在になるんだろ…球と違って生き物はいつか死んでしまうから、それこそたった一度の人生をどう生きるかってのが命題だったりするので、その対比も表現されるのかな。出版社の推しもネットの声もすごいけれど、この作品は1巻(1月発売)から劇的に跳ねる大ヒットになるか、それとも今後読む人を選ぶかどっちに転ぶのだろうと先行きが今いちばん気になっているある意味化け物のような存在の作品。きれいな絵で見せる哲学めいた世界観やよくわからんがすごい、みたいなものに圧倒されるようなところは確かにあると思う。わたしは1話を読んだときになぜかファイアパンチが脳裏をよぎった。1話掲載時の表紙の煽りを見るに、手塚先生に挑むって意味かなあ。火の鳥

www.shonenmagazine.com

 

・中間管理職トネガワ(~4巻)

これはカイジを知らないとおそらく面白さが半減……だが……!知っているひとが読めば……!実に愉快……!痛快……!圧倒的痛快っ……!

というかんじ。カイジ好きな人はみんな読んでいるのでは。

カイジに出てくる帝愛の利根川さんが主人公の公式スピンオフ。福本先生ご本人の作品(ご本人が描いた話が特別収録されている巻もある)ではないけれど、アシスタントの方が描いているらしく福本作品の絵柄はもちろん色や特徴そのままにギャグに落とし込んでいる秀逸な作品。ギャンブル漫画ではなく、利根川さんもブラック企業に勤める一サラリーマンとして、兵藤会長と部下の黒服のあいだで苦悩している面を描く。どこか哀愁や切なさも感じてしまうし、なんかかわいいおじさんに見えてくる。「限定ジャンケン」を黒服がパワポを無駄に駆使して作り上げた資料でプレゼンする回がすきすぎる。この利根川の「パワポ……!」の一言でも意味わかんないくらいわらえた。

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だいたいギャグでわらえるけれど、実際にこういうことありがちみたいなネタで切り込んでくるので、社会人としてはけっこう刺さる面もある。

このマンガがすごい!2017オトコ編 第1位受賞おめでとうございます!!

yanmaga.jp

 

東京タラレバ娘(~6巻)

アラサー女子のHPを削る攻撃力に於いて右に出るものがやはり今年もなかった。最近ありがちな「アラサー彼氏なしの処女が年下男子にアプローチされて胸きゅん歳の差ラブ!」とか「こじらせヲタのわたしがイケメンに告白されてドキドキ恋愛レッスン♥」みたいなノリだったら「はいはいファンタジーファンタジー」とこちらもノリで楽しめるが、これは読むとだいたいタコ殴りにされて精神がサンドバッグ状態だし、泡を吹いて気絶しそうになるか針の海に身を投じるか自ら業火に焼かれにいくか…もはや娯楽作品じゃない。そんな作品をなぜ自ら好んで読むのか?読み終わるとなぜか「働こう」「がんばらなきゃ」と奮起する。そんなパワーがある。というかおそらく「働かなきゃ」「もはや働くほかに道はない」がただしい。

kisscomic.com

実写ドラマになるのは時間の問題だった。ただあの独特なハイテンションと行き場のない焦燥をはたして実写に落とし込めるのか疑問。つーか白子とレバーの声は誰がやるのさ。

 

・あげくの果てのカノン(~2巻)

このマンガがすごい!2017 わたし編』の1位に推したい。

端的に言えば恋愛マンガだけれど、この作品の世界は「ゼリー」と呼ばれるエイリアンに襲来されていて、普通の日常はあってもやっぱり普通じゃない。そんなエイリアンと戦う組織にいる先輩にずっと片想いをしているのが主人公かのん。先輩(既婚者)の行きつけのお店でバイトして再会に賭けたりいざ再会できたら盗撮するわ(これはむかしから)会話密録するわでまあストーカーっぽいところはあってもずっとすきなんです。一生好きでいられるって言いきれるくらい。先輩はエイリアンとの戦闘のたびにからだを負傷して、それを回復させるための「修繕」によって性格や好みが変化をしていくので、かのんが好きになった高校のときの先輩はおそらくどこにもいない。だけどかのんは相変わらず先輩がすき…恋やすきになることに理由はないとはいえ、きっと何かしらひっかかるものや響くものがあるのだと思う。だけどもしもそれがかたちを失ったら、「すき」はどこへいくんだろう。恋に落ちる瞬間に理由はなくても、わたしたちは時にいろいろと後付けをしたがって、こういうところがすき、なんて言い出したりする。人間多少変わることはあってもやっぱり根本にはその人がいるはずだからたぶん安心できるのに、それがまるで変わってしまったら、その根本的なところさえ知らない人になってしまったらすきでいられるのだろうか、と考えるとそもそもすきとか恋ってなんだろう、第一なにを、どこを持って「すき」だと過信し、断言できるのだろう、これまでそうしてきたのだろうと考え込んでしまった。

あと、ここに描かれているかのんの恋は、恋そのものだと思う。個人的には恋はきらきらしたものなんかじゃなく、どちらかといえば醜態だと思っている。もっと言えばありとあらゆる不安定な情緒と感情を煮詰めてできたどろどろに、目に映る世界が変わるほどの眩しさを混ぜてできる振り切れるほどの狂気。表には出さなくとも、ストーカー的な行動には移さなくとも、どこかシンクロする部分が誰しもあるのではないかと思う。

装丁もいい。

www.shogakukan.co.jp 

 

・同居人はひざ、時々、頭のうえ。(~2巻)

今年は空前の猫ブーム来てたねってことで。猫マンガもいろいろと刊行されたイメージ。これまでもねこぱんちコミックスをはじめとしてコミックエッセイあたりでいろいろあったんだけど。

とにかくお転婆な陽ちゃん(猫)がかわいい。ちょっと目つきが悪いところもかわいい。癒される。外出や人と会うのも苦手な引きこもり系低体温男子である飼い主のことを「わたしがまもってあげる!」ってかんじなんだけど、この陽ちゃんも飼い主素晴くんも家族と別れているので、少しずつ近づいて家族や居場所になっていくのかなって話。素晴くんを取り巻く人たちが結構世話焼きで明るく彼とは正反対で、そういうひとたちとの関わりで彼も少しずつ変わっていくのだろうなあ。

comic-polaris.jp

甘々と稲妻(〜7巻)

夏アニメ作品。ふつうにわたしが好きなやつ。癒し。ごはんを誰かと食べるってしあわせでおいしくて、だいたい毎巻やさしくて泣いてる。基本的に飯マンガが好きで、食を通して日常や心の機微が描かれていたらより好きでどちらかと言えば店の食べ歩きよりもじぶんたちで作るともっといい。そういう意味ではこの作品が一番好き。実写ドラマになるかと思っていたが先にアニメになるとは。

 

3月のライオン(〜12巻)

12巻で川本家の父親問題が終結して、息詰まる重さがとれてようやく本来の良さが戻ってきた気がする。いつか川本家の話も描くのだろうとは思っていたけれど、ひなたのいじめ問題のあとに父親の話が予想外の展開で続いて読むのが少々辛いところがあったけれど、12巻でやっぱライオン好きだわ、と思えた。

『3月のライオン』羽海野チカ | 白泉社

 

・深夜のダメ恋図鑑(~2巻)

正直ずっと動きが鈍い作品だったんだけど(うちの店舗だけかもだけど)表紙からしてもう返品するのが惜しくてこういうのは今の時代に受けるんじゃないの…?と思っていたら、2巻発売のタイミングかなにかでネット広告に載ったみたいでじゃんじゃん売れた。女性陣もちょっと環境や設定が特殊であったりするし、登場するダメな男も待って、ここまでひどい人いる?とは突っ込みたくなるんだけど、深夜の女同士の本音がえぐいのはだいたいあってる。さわちゃんとおバカ彼氏のやりとりが1番好き。
www.petitcomic.com

 

ほかにも目を通したものも含めていろいろと読んだ気がするし、続刊があいかわらず安定して面白いものは多々あったけれど、今年は全体的に小粒で、大爆発した作品あったかな?くらいの印象。去年のダンジョン飯みたいな、一年通したマンガランキング系で絶対1位になるでしょ!ってわりと容易く予想できる作品がなかった。話題性という面ではいくつかあったけど、ランキングの上位にはつけてくるんだろうなあくらいで、なんかサブカル層の中だけでもう完結してない?ってかんじだったり…ライト層を巻き込まないと大爆発とは言えないし、たとえはじめはサブカル的なものだったり、濃いマンガ読みの方が目をつけていたものだったとしても浸透していってすごく広がったというはたぶん今年のランキングにはあまりない。情報の共有が早いから、正直瞬発力はあっても持続性がないことも多いし、もちろん良いものだからこそそれが作用しているってこともあるけれど、情報の多さで錯覚に陥ってしまっているものもおそらくある。ランキング自体が販売数や安定した面白さをもつタイトルの選定ではなく、いかに新しいもの掘り起こすかって主旨だろうからそれはそれでいいんだけど、大絶賛されていても店頭で全然回らないことは多々あった。地域性や客層によって売れ筋は変わるから、そのあたりの影響もあるかもしれないけど。

正直アニメ化原作の売れ行きもなかなか厳しくなっているのを感じる。『僕だけがいない街』や『Re :ゼロから始める異世界生活』(ライトノベル)は跳ねたけどもう売れて売れてしょうがないっていう体感があったものは夏頃からはあまりない気がする。

君の名は。』のヒットのおかげか、関連書籍をはじめ、新開監督作品のコミックは好評だった。

個人的にはアニメに関しては続けて観る時間がなかなかとれないのと、だいたい二期ほど前から在庫を確保できるように準備しているので、はじまる頃には在庫が揃ったことに満足していたり、次やその次の準備に取りかかっていて観るところまでなかなか至らない。怠慢だ…

でもこれはきちんと観ようと思って3月のライオンは観ている。土曜11時という時間帯なのでリアルタイムしていたら母親が突如としてはまったwおそらく好きそう、という感覚はあって、以前からこのマンガの話題を夕飯の時間に持ち込んだりしていたのだけれど、やはり百聞は一見にしかず、というのか自分で目の当たりにしないとなかなか引っ掛からないものだなあと思った。ライオンは発表されたときや日常話しているときは、うん?シャフト…?と感じることが多かったけれど、心象風景を描くときはあ〜〜こういうことかと納得だし、このあいだ香子が出てきたときはもう香子さんただのシャフトのファムファタールやんくらいの勢いだった。3か月目にして未だ2巻の途中までしか描かれていないという丁寧な作り方で、いったい何クールで原作のどこまでいくのだろう。島田さんや宗谷さんの声優さんが決まっているところを見ると、2クールはありそう。序盤の中では2巻のラストがとても好きなシーンなので、そこが放送されるのが楽しみ。

それと鉄血のオルフェンズくらいしか観ていないのでわたしもうアニヲタ名乗るのやめるわごめん…刀剣乱舞をプレイし続けていれば花丸を観ていたんだろうなーと思うんだけど、検非違使登場したあたりからめんどうになってきてしまって、ちょうど鶴丸がカンストしたからやめてしまった。『ユーリ!!! on ICE』がちょっと気になってユリオのビジュアルを見たときになんとなく転がり落ちる未来しか想像できなかったので、それもやめたけどフィギュア観るの好きだし、DVDレンタルはじまったら結局観るかも。

趣味(主にジャニーズ)が増えたせいでここ数年どうしても金銭的な比重がそちらに傾くことが多く、4月に二次ヲタ人生一旦完結させるわ的なことを言っていたんだけどなんだかそのとおりになった。それに加えて、アニメにしろゲームにしろ女子の覇権ひととおり通るぜ!みたいな時代はわたしの人生の中ではもう終わったんだろうな。たぶん『Free!』がさいごだった。結局歳かなってところに落ち着いて悲しいねえってはなしなのだけれど、やっぱりめまぐるしすぎてああ、もうむり、っていうのが事実だからしょうがない。前回も書いたけれど、それでもきっとまた「これは」って作品に出会うときが来ると思うのでそのときには全力で楽しみたい所存。とりあえず来年、黒子のバスケの新作映画は楽しみにしている。

 

 

 

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第1期完走の感想。

 前回、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』放送直前SPを観たことを書いた。

rubyk.hatenablog.com

あのあとさっそく鑑賞開始、先日ついに25話まで観終わったので感想を書こうと思っている。26話の見逃し配信期間中に間に合ったーーー!!第2期のスタートを観ずに毎週観るのは微妙だし、かといってDVD出るまで待てないしな。

わたし自身は前回も書いているように、ガンダムには詳しくないので「ガンダム」の名を冠した作品としての「鉄血のオルフェンズ」の評価はわからないのだが、わたしのようなニワカが観たオルフェンズはおもしろすぎて毎話震えてたよ…!

 

以下感想はがっつりネタバレ含んで投下します。進行中の方はお気をつけて。ガノタの方がもし読んでいたら、ニワカの感想だと思ってお手柔らかにお願いします。

いつもジャニネタでブログ書いているわたしですが、今回はジャニーズはぜんぜん関係のない内容です。あ、でも一言だけ。たいぴちゃん、あなたがジーンズを愛する気持ちがことしもかたちになりますように。

 

 これ欲しいわ…買うか…って思ったんだけどプレミアついてた。

 

 

とりあえず感想のまえに声を大にして言いたいのは

ビスケットのネタバレ、放送しちゃだめなやつじゃね??

いや、2期の直前スペシャルだから、1期観た人が見ているだろうという前提かもしれないし、インパクト大のシーンを見せて一気に惹きつける目的もあったのかもしれない。だけどあの番組で惹かれて円盤買ったりレンタルに走るひとがいるかもしれないことを考えるとあれ一番やっちゃダメなやつじゃないかなーそもそもまずあそこに召喚された宮田くんは未視聴のひとだしな…

というのも、わたし自身は視聴前にビスケットというキャラの立場をよく理解していたわけじゃないので、大勢いる仲間のうちのひとりで、とはいえそのなかでも主要キャラクターなのだろうくらいの感覚でいた。もちろん戦いを描くわけなので仲間の死という描写は避けられないだろうし、おそらくビスケットという子だけじゃなく色々な仲間が死んでいく鬱展開なんだろうな…と思い描いたのよね。

いざ、見始めるとビスケット超~~~~~重要キャラでやんの。しかも参謀、冷静、頭脳、やさしさ、ストッパー、お兄ちゃん、可愛い双子の妹、そしてふくよかなかわいさによる癒し効果、CV:花江夏樹といういくつもの要素を兼ね備えているうえに、このひとがいてくれるから大丈夫だよね、っていう主人公の三日月さんとはちがうベクトルでの安心と信頼を寄せられるキャラクターだったからびっくりだよね。

ビスケットの死をネタバレするのは、昌弘からフミタン、そしてビスケットという過程で死を描いた意味がなくなってしまうんじゃないかなーと思った。戦いのなかで犠牲になった少年も敵もたくさんいるのだけれど、鉄華団のメインキャラクターのなかで唯一の死だし、あれをトリガーとして最後の分岐に入っていくような重要なポイントだったし…それこそさいしょの感覚だとシノとかユージンあたりのキャラもがんがん死ぬんでしょ?みたいなかんじだったんですよ。でもそれはなかった、みたいな…

まあ最初から観ていればなんの問題もなかったわけだからわるいのはわたしなんですけどねw四の五の言ってんじゃねえ!ってかんじですねw

 

さて、作品の感想。

 

まず、キャラクターがみなとても良かった。主人公の三日月・オーガスだけど、たいぴ*1ではなかったなふつうにwそれにミステリアスって説明していたけどべつに秘密主義っぽくはないように感じた。躊躇なく「ありが」パンパンつって銃声鳴らしたり、人殺しを楽しんでいるだろ!?って言われるくらい戦闘に於いて冷徹だったり狂気じみた面はあるけれど、仲間(と認めたひと)傷つけるやつ絶対許さないマンだったりやさしいところもあったり、天然ジゴロだったり…なかなかのキャラだと思いますやっぱすげえよミカは…ただなーオルガとの関係性はうーーーーーんなんだろう…信頼とか絆とかもはやそういうことばではかんたんに言い表すことができないし、うーーーーん共依存とかにちかいのかなあ…?三日月→オルガもなかなかだけど、オルガ→三日月もなんかこわいんだよねえ…囚われてるかんじがする。22話だったかな、ビスケットがいなくなって再起不能寸前に陥ったオルガの立ち直らせ方は正直すっごいこわかった。あれが三日月さんなりの(っていうか三日月さんにしかできない)オルガにしか届かない喝の入れ方のようにも思えるけど、それだけでもなさそうに感じる描き方だったんだよねえ…何度も描かれていた過去のシーンにヒントがありそうですが、それは2期で紐解かれるのでしょうか。

 三日月だけじゃなく鉄華団自体、生きていくためにしなければならないことのためにするっていう、戦争がどうかとか人殺しがどうかとかそんなことを机上で論じている場合ではなく、今日を明日を生きていくためにどう動くのか、という印象を受けました。弾除けや撒き餌扱いをされ、使い捨てられようとする彼らにはそういう選択しかないだろうし、冷静な当然の選択なのだろうなーと。だけどなんか儚さもかんじましたね、前に進むしかないぶん強くもあるのだけれど捨て身にちかい強さだし、少年たちの揺らぎや孤独、脆さもそこにみちゃうみたいな…BBAだからさ!

だから、そうやって身を寄せ合うこどもの彼らがタービンズと出会えてよかったと思うんですよね。これまでまわりの大人=クズくらいの認識(おやっさんはべつ♡)だったんでしょうが、そうじゃないひとも広い世界に出てみればいるっていうか。とつぜんの任侠みにはわらったんだけど、よくよくかんがえてみれば、鉄華団っていうネーミングだって、血が固まって鉄みたいに云々って言っていたし、もともと他人が寄り合ってひとつのコミュニティに家族くらいに濃いつながりでいるって、それこそ任侠の世界だなと思うので、なるほどな~と。

ヒューマンデブリであることをことあるごとに卑下していた昭弘が弟の昌弘との再会で話したすべてと「楽しかったから俺がゴミだってこと忘れてた」って語るあたりがすきすぎるんだけど、居場所をじぶんたちで作っていくのと同時にそこをじぶんの居場所であることをゆるしてくれるひとがいるっていうのも大切だよなと思った。

昭弘と言えば、いや~~もうラフタとアジーさん生きてて良かったよね;;;;

派手が過ぎるくらいにフラグを乱立しまくって、教科書どおりかってくらいきれいに回収していくっていうのがつづいたから、ペディキュア塗る描写が頻繁に出ていたラフタなんて仮に生きてても足失うんじゃないかとかもう操縦できなくなるんじゃないかと思ったし…

 まともなおとなと言えば、メリビットさんもそうだと思うんだけど、彼女に関してはまともがすぎて

 

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これ。

たしかに「弔い合戦だ!」ってオルガが言いだしたときはひぇえええっ暴走!ってなったし、メリビットさんの言うこともごもっともなんだけどね…でもなんかおとなすぎたよね…ああいう世界で生きてきた子たちだし、片や銀行部門で働いていたひとだし…

あと、Wヒロイン?をはじめ、女性のキャラがすごくすきでした。アトラちゃんの「ふつう」さはストーリーの要所要所で効いていたし、クーデリアもどんどん成長してかっこよくなっていたし、タービンズの面々なんて最高ですよほんと…アミダ姐さーん!女性は強いよね。嗚呼でもフミタンの回はな…フラグ立ちまくってたからわかってたけど、うっ;;;;

カルタも敵側だけど良かったなあ。CV:井上さんつよすぎ…幼いころのマクギリスとのやりとり、ああいうところがすごくいいですよね素直じゃないけど。ツンデレ発揮して部下に苦笑いされちゃうかんじからするに愛されるポンコツ(ひどい)

マクギリスにはああいう高潔さみたいなところが疎ましかったのかもなーこれはガエリオにも言えると思うんだけど貴族育ちで結構世間知らずっていうか温室育ちっていうか、なんか正しすぎるんじゃないかな。ガエリオの正しさってまさに純度の高い正しさだったし。正義の主人公を描くならガエリオみたいなひとなんだろうね。マクギリスと対峙して泣いているガエリオ、ほんとただの主人公だった。

そんな細胞の隅々まで真っ黒なチョコの人マクギリスさん、ほんっといい声出すなあ!!!!!

あの声になら騙されてもいいわむしろ騙してくれ…ベストオブいい声は、アルミリアに向けた「踊らないのかい?」です。絶妙なトーン…!

マクギリスはどうもファリド家に拾われる前は三日月たちとおなじようなかんじだったのかな?ギャラルホルンの改革云々言ってたけどそれは表向きで真の目的は復讐だよね?でももうお義父さまを島流しにしちゃってだいぶ遂行できてないか?セブンスターズ内の地位くらい?あとギャラルホルン自体崩壊させたいとか…過去に関係したなにかが更にあるのかどうかは2期しだいかなって思うけど、27話観たかぎりではラスボスっぽさがあまりないように思えた。これも計算なのかもしれないけど…

マクギリスまさに外道キャラだと思うけど、なんか嫌いになれないんだよな。すきですよマッキー。わたしのなかではネタになりつつあるごめん。だって「内通者がいるんだろう、腐敗ここに極まれり」キリッとかわらってまうやろ…

 

 ストーリーでびっくりしたのは「阿頼耶識」というシステム。MSとじぶんを接続…?脳に直接情報を送り込む…?阿頼耶識という言葉は仏教用語で「無意識」みたいなことをいうらしいので、まあ神経接続…MSとじぶんが一体化するようなそんなかんじなのかな?だからじぶんの身体みたいに動けるっていう認識でOKなんですかね。観ている限りでは攻撃された場所とおなじからだの部位に痛みが連動するようなことはなさそうだったけれど、最終話にてバルバトスとの関わりを深くした三日月さんの目と右腕のことを思うと、阿頼耶識を使うことによってでかいデメリットがなにかしらはあるんでしょうね。今も負担かけてるけど、もっとどうしようもなく絶望的なやつ。しかしアインの阿頼耶識はどうせそんなことになるんだろうと思ってたよ…っていう虚無感しかなかったな。あれもフラグかもな。

 しかし前半はほんとうに熱い展開だった!個人的にすきだったのは第4話~6話。そのあとのタービンズとのあれこれも良きだからこのあたりは夢中になっちゃって睡眠時間削って観た。しごと中めっちゃ眠かったけど、帰ったら続き観るんだ…!で乗り越えてるあたりなんだかアニヲタになったばかりのころを思い出した。2周しちゃった。

まず大荷物持って志願しにきたアトラちゃんかわいい大正義だしね…ユージンの見せ場も熱かったし戦闘のテンポや描写も良くて手に汗握るじゃないけどほんとうにわくわくした。マクギリスやガエリオと交戦したのもここがはじめてだったし。

「迎えに来たぜ、大将!」

「時間どおり!いい仕事だぜ昭広!」

のとこの昭広最高すぎて惚れた…6話はほぼ日常話で、オルフェンズは戦闘少ないって言われているみたいだし、確かに毎回戦闘があるわけじゃないな?とは思うんだけれど、成長や変化が観られる日常回はけっこうすきです。うまく言えないんだけど、生きているってかんじがします。だから切ないけど第13話「葬送」もいい回だった。あれこそ生だなって思うな。あと大気圏突入のシーンも印象に残っている。敵のモビルスーツ盾にするとかさすが三日月さん…あんときのアトラのぐっちゃぐちゃの顔かわいい天使か。こんだけアトラかわいいかわいい言ってるけどわたしクーデリア派なんだわごめん。

ただ、後半、特に地球に入ってからは熱いというより凄惨な展開へ巻き込まれていったり自ら進んだりな鉄華団っつーかオルガだったから、最悪三日月さんとオルガ以外((ユージンとかは別だったけど)これは勘違いだった。後半も2周したら24話にてちゃんと加勢していた)

全員死…ってラスト予想したしむしろそれ以外ないだろ…な選択だったからラストがすこしぬるめだったような…?いや、全滅ENDじゃなくて良かったんだけど、あそこまで都合よくいくかなあ…とも思った。それこそじゃあなんであの時点でビスケット死なせた…っていう。うーん…ビスケットがいなくなったことと、それによって歯止めが効かなくなってあの選択しかなかったっていうのはわかるんだけど…

ドルトの労働者のデモとかも、あ~やりたいことってか描きたいこといっぱいあるのかな~って思ったけど、いろいろ広がりすぎて急にぼんやりしたように感じたのは否めなかった※追記:2周したらなんとなくつながった。理解力の問題だった。

でも久々にぐっと来た作品であることには変わりなかったし、これだけ夢中になったのはひさしぶりだった。知識なさすぎて歴代の作品との繋がりだとか、どう違うなにが違うってこともガンダムとしてどうなのかってこともわからないのだけれど、知らずに過ぎなくてよかったと思える作品だったことに間違いはないです。なんかとっ散らかった感想になってしまったけど…

モビルスーツモンタークさんの赤い機体がかっこよかったな!カラーリングとしゅっとしたのが好み。名前調べたら「グリムゲルデ」だったからさらに良き。バルバトスの武器も鈍器系だったり太刀だったりしてわくわくさせてもらいました。

 

27話からリアルタイム…と言っても日5はだいたい働いているので真のリアタイではないんだけど、追いついたので観ています。

気になるポイントがすでにたくさんあって非常に楽しみです。OPには不穏な三日月さんの姿もあって壮絶な展開になりそうだなあ…と思っているところであります。

毎週待ち遠しくてたまらなくなりそう。

*1:Kis-My-Ft2藤ヶ谷太輔。竹若さんたちのミステリアスな主人公という説明を受けて、宮田くんがキスマイメンバーに例えた

キスマイ担、オルフェンズにあっさり落ちる。

Kis-My-Ft2の宮田くんが出演した『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の特番をみた。特番観ていなくてオルフェンズを進行形で観ている方はネタバレ書いているので気をつけてください。

 落ちる、と言っても正確にはまだ観ていないのだけれど、30分であっさり「やばい、観よう…」ってなった。

オルフェンズは第一期の放送当時、Twitterで毎週話題になっていたので、人気なんだなあくらいの認識でまったく触れてこなかった。たしか岡田さんが脚本書くっていうニュースもちらっとみた気がする。「あの花」*1のイメージがつよかったので、ガンダムってまたずいぶんちがうジャンルのものを…って思ったのを放送観ながら思い出した。

わたしはガンダム自体にそもそもほぼ触れていなくて、観たことあるのは無印とSEEDくらいかな、あとOOは観てみようかなと思いつつ観ていなくて(女子ヲタみのつよいチョイス)UCおもしろいよっておすすめされたり、良平さん*2がサンダーボルトに出るっていうから、去年挑戦しようかなと思ったりもしたのだけれど、ガンダムって敷居高いというか、その正史?U.C?言い方がただしいのかわからなくて申し訳ないが、この作品とこの作品はおなじ世界線?だけどこれはちがって…というのが複雑でどうやって理解したらいいのだろう…混乱。ってなってしまい手の付け方がもはやわからない…というかんじだった。ただ職場でトライエイジのカードを扱っていたことがあるので、登場人物とかモビルスーツの名前だけはちょっと知っているかもな…キュベレイパピヨンきれい…とかそんなレベルのはなしだけど。

 

ロボット系アニメといえば、わたしはエヴァ(ロボットじゃないけど)がじぶんの人生に多大な影響を及ぼしたもの選手権で1,2を争うくらいの作品なので、そっちにどっぷり浸かっていた(Qのつづきはよ)のもあるかもしれない。エヴァは正直、とくに旧アニメや旧劇はメンタル的な意味で観るタイミングがむずかしく、下手すると底まで沈みきってしばらく浮き上がれないまま日常を送ることになるので、ライトな感覚で「またみよーっと」とはならないけど…覚悟がいるアニメすぎてね…

あとはマクロスとかかなあ。Fのシェリル・ノーム惣流・アスカ・ラングレーとじぶん内すきな女性アニメキャラクターランキングにおける双璧だったり、音楽がキーポイントだったり、その音楽がどの作品もすきで。シェリルはもちろんのこと、プラスのシャロン・アップルの「INFORMATION HIGH」をはじめて聴いたときほんとうに衝撃的だった。バルキリーの変形とかも素人目線でかっこいいなとか。

あーあとエウレカセブンもいいね。「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」ですね。SUPERCARの「STORY WRITER」に乗せてリフする映像にしびれたり、わたしくそサブカル厨女なので、話のタイトルが毎回いちいちかっこよくてやばい!って思ってたな。第48話「バレエ・メカニック」は泣かずにはいられない(追記:まちがえた。47話って書いてたので修正しました)アネモネ…!!

 

…それくらいかなあロボット系は。なので「宮田くんをガンダムにはまらせる」というテーマをそのままそっくり楽しめた。

はじめに竹若さんが「人間ドラマ」「大河ドラマ」と言ったときにすでに、お、もしかしてすきなジャンルのやつかも、と興味がむくむくと湧いてきた。ことあるごとにバックでかかっていたマンウィズの曲もかっこいいから相乗効果もあってなんかドキドキしてきちゃって、やばい、おもしろそう、観ようかな…!アナの方がおすすめしていた戦闘シーン、生々しいかんじでわたしの知っているガンダムじゃないような…?ん、物理?!?!ていうかえっマクギリスかっこいいな!とか高まっているところに投下された3人が選ぶ名場面集。

えっキャラの死……!?!?!?

一期はとっくに終わっているしネタバレもなにもってかんじだけれど、軽率に明かされた重大なネタバレにぎょっとする我。

はなしの前後もキャラクターのことも説明があった範囲でしかわからないけれど、このシーンあやうく泣きそうになった。あのタイミングで曲流れてくるのはだめなやつ…っていうかこの曲鷺巣さんなの!?(ぐぐった)そりゃいいわけよな…

あと向さんチョイスのシーン。

えっさっきの白い女の人もしぬの????

宮田くんじゃないけど、二回目は無しですよ(笑)

だけどすきな方がチョイスしているだけあって、これもなかなかくるシーンですね…あの女の人もしかしたらわたしがすきなかんじのキャラかもしれない。

二度にわたる重篤なネタバレはあったけれど、それでもやっぱり観たいと思ったのでレンタルしてこようかな。この時期棚空っぽかもしれないが…

さいきんめっきり二次元関連によわくなっていて、「君の名は。」どころか「傷物語」の二部も観に行けていないくらいアニヲタ名乗る資格なしなんだけど、ひさしぶりに高まりを覚えた作品だった。

とりあえず公式HPとウィキぐぐってみた。声クラスタとしては声優さんも気になるところ。

主人公は「3月のライオン」で桐山くんやる方かなあ。秋アニメはライオンだけはなんとしても観ようと思っている…羽海野チカ先生も人生に多大な~選手権上位。

あっ例のビスケットくんのシーンに出てきたキャラ、細やんか!!この声だれだっけだれだっけってずっと考えていた。梅原くんや花江くんもいるのね。

っていうかマクギリス櫻井さんなの?!?!あーあの女の人井上さんか!!!あ、これはすごい。あっハーレムのひとは鳥さんなのねwわ、なんか似合いそう。

あまりじっくり読むとさらなるネタバレになりそうなのでざっとスクロールしただけだけど、声優さんも豪華だ。大川さんとか田中さんもいたぞ…

二期のスタートまでに追いつくのはさすがにきびしそうだけれど、ことしの秋冬はちょっとずつオルフェンズを観るのをたのしみしようと思う。

 

なんかひさしぶりにアニメについて書いた気がする。ほんとうは「バスケも恋も、してみたい」の感想を書きたかったのだけれど、あのドラマ観たらなんでか苦しくなってしまって、うまくまとめられないんだよなあ…The普通を目指して藤ヶ谷くんが演じたもさいってかださい土屋くんはすごくよかったし、はなし自体はもうすこしくわしく観たいなあとも思ったくらいよかったんだけど。学園ものの少女漫画読む感覚で観るんだろうなという心がまえが甘かったのかも。刺さった。

青春の瞬きが突き刺さる。

劇場アニメーション『びたがってるんだ。』を観てきたのでその感想(ネタバレ含

 

予告↓(貼り付け方あってるかわからないけど…)


映画『心が叫びたがってるんだ。』本予告 - YouTube

 

ジャニーズとは関係ないけど、趣味の話だからいいよね。基本的にわたしは第一にアニヲタなのだ。

 

まずこのタイトルね。このタイトルを知っただけで観たくなるマジック。この魔法にかかるってことはわたしも心が叫んでないのかな、と思う。わたしは素直じゃないので、本当にそうだ…特にね、好きなひとに好きだと言えないです。見込みないのにぶつかることができない。伝えればよかったと後悔しているひともいる。あとはやっぱりめんどくさいことになりたくないから、「言いたいことがあるならはっきり本人の前で言えばいい」的思考が苦手。言えない。嫌われるのが怖いからだと思うんですが、でも何気なく言った言葉で傷つけてることもあったので、結局言わなくても言っても傷つけることがあるんですよね…難しい。

 

さて、この映画のあらすじをざっくりまとめると、おしゃべりな主人公の成瀬順が幼い頃に言った言葉が原因で両親を離婚へと導いてしまい、突然湧いて出た玉子の妖精に「ひとを傷つけないように」お喋りができない呪いをかけられてしまいます。それ以来、高校生になっても誰とも話さず、言葉を発せず暮らしていました(喋るとお腹が痛くなる)

しかし、学校と地域とのふれあい交流会が催されることになり順は実行委員に選ばれます。ともに選ばれたのは坂上拓実、田崎大樹、仁藤菜月の三人。そのふれあい交流会でミュージカルを上演することが決定し、順は自分の気持ちを脚本にし、拓実に励まされ、本当は言いたいことを歌って伝えようと考えました。そして順だけでなく、他の三人も心に言えない想いを隠していて……こんなかんじ?

 

とりあえずキャラクター評(あくまで個人主観)

成瀬順…激萌え。この一言に尽きる。喋らない代わりに表情や仕草、動きが豊かで本当に可愛らしい。不器用すぎて若干他人から見るとイラつく場面もありそう。cvの水瀬いのりさんが本当に上手い。静から動へ感情が動いていくにつれ声が漏れてくる順ちゃんの成長に泣いた。

坂上拓実…順ちゃんと同じような境遇を経て本音を言わなくなった少年が開いていく様がもう。内山くんイイネ!どんどんエモーショナルになっていく坂上少年に、とうの昔に過ぎ去った青春の果てで疲れ果てているおばさんには眩しかった。嗚呼…高校時代にこんなひとに出逢いたかったぜ!

仁藤菜月…優等生で美人、人望もあるハイスペック少女。一番大人だし、正直な気持ちをありのまま見せないように取り繕ってるなー言っちゃいけない言わない、で拓実とは現状維持に勤めているんだなって感じ。正直厭味ったらしいほどいい子。ほんといい子なんだろうけど。恋に悩んでいるのである意味一番普通。でもその普通が高校生ってかんじ。他が重すぎなんだよ。

田崎大樹…なんだこのDQN!?怪我して甲子園への夢が破れたからってすべてに当たりすぎと思っていたけど実直なだけあって心を入れ替えてからはいいやつすぎか!細やんほんとうまいよねえ。『坂道のアポロン』とかもそうだけど。怪我してもう部活出て後輩にやいのやいの言ってたらうざがられるってもうあの、仕事とかでもある気がしてきて汗。良かれと思ってもマイナス、こういうことはある。日常に。まあやさぐれても三嶋くんに守られてるけど。なんか男子高校生がつまってるキャラだった。

 

一番良かったシーンってなると、やっぱりラストに向かう、廃墟になったラブホテルのシーン。ここから号泣タイムが始まったので…それまでも「町内会費ありがとう」までのくだりとかでうるうるしたりしていたけれど、もうここからはカタルシス。

順の書いたミュージカルの脚本は、ほぼ自分を踏襲した作品なので、ひとを傷つけ、罰を受けて言葉を失った少女の前に、優しい王子さまが現れたことで愛を知り、想いがあふれ、けれども話せないので伝わらなくて…そこから事件を経て少女の気持ちが皆に伝わるという内容。つまりその王子が拓実。拓実は順にとって本当に王子さまだと思うんです。山の上のお城に憧れて(ラブホ)、いつか王子さまと舞踏会に…と夢見ていた幼ない日の順。今はそんなに夢見がちじゃないとはわかっていても、突然現れた、はじめての王子さま。それこそはじめは接点がなかったふたりだけれど、両親のことも、玉子の妖精の呪いのことも、初めて話した(メールでのやりとりだけど)のが彼だと思うし、順が「わたしの心をのぞき見していますか?」と思うほど、順の気持ちを言葉なしでも汲み取ってくれたひと。歌なら呪いは関係ないかもとか、伝えたいことがあるなら歌ってみてもいいんじゃね?とか言ってくれたり、ミュージカルがめんどくさい、というクラスメイトたちの前で真剣に説得してくれたりお腹痛くなることを心配してくれたり…そら惚れるわ。完璧王子じゃん。

公演日前日、最後のリハーサルを終えて片付ける二年二組。そのときに、順は拓実と菜月の会話を偶然聞いてしまい、ふたりがかつて恋人同士だったこと、そして一番大切なことが拓実に伝わっていなかったことを知ってしまうんですよね。歌わなくても思ってることわかる、と言ってくれたのに。

菜月は拓実が一番大変な時期(両親の離婚のことだと思われる)に何もできず、しかもまわりに付き合ってるの?からかわれて、違う!といってしまったことを拓実に聞かれてしまい後悔しているし、今でも気持ちがあるゆえに、拓実が順を好きだと思ってやつあたり気味で拓実にくってかかるときに(この気持ちも本当によくわかる)拓実の気持ちが本当は誰にあるのか完全にはっきりとわかってしまうし、しかも「言いたいことは言わなきゃ伝わらない」と。もうね、これを聞いた順ちゃんの気持ちを考えるとね、決壊した。

迎えた公演当日、順ちゃんは逃げる。色々なものから逃げ出す。クラスメイトは探してくれるけど、原因がわかって呆れてしまうし、幕は上げられないし、もう踏んだり蹴ったりの状況のなか、拓実が探しにいくわけですが「待ってろ…成瀬!」ってずるすぎだろお前…!っていう。あ、青春の中で走っていく様がですよ。結局菜月を少女役に変えて幕があがるので、せっかく見に来てくれたお母さんまでもまた落胆させ…

結局順ちゃんはすべてのはじまりになったラブホにいて、拓実と対峙したときに出た

「歌えない。わたしの王子さまはもういない」

そう、もういない。わたしの王子さまは違うお姫さまのことを愛している。歌えなくなってしまうかわりに、もう話してもお腹は痛くない。けれど胸が痛い。おしゃべりで両親を傷つけてしまったことを玉子の妖精のせいにしなければ、どうしようもできなかった順ちゃんの激しい言葉がどんどん溢れてくる。順も拓実もエモーショナル。もうこのへん泣きすぎて細かくあんまり覚えてないんだけど、確か成瀬の声って可愛いからもっと聴かせてくれとか、俺を傷つけていいよ…お前の言葉か聞きたいみたいに拓実が言っていて、順ちゃんが「今からあなたを傷つける」「思わせぶりやろう!」とか「あの女も同罪!いいこぶりっこ!」とか思いつく限りの悪口を吐き出す。それに対して、うん、うんと頷いて全部受け止めようとしてくれる拓実。ええ男や…!まあ菜月の悪口のときはちょっと微妙だったような。うん。勘違いかもだけど。

でもさ、拓実って鈍感野郎じゃん?今日の今日まで順の気持ちに気づかなかったわけで。でも今は一応気づかされたわけじゃん?そこで「お前に出会えてうれしいんだ!」はどうなんだろうね。そりゃ色々たくさん気づけただろうし、順ちゃん的にも「せい」じゃなくて「おかげ」ですごくやさしい気持ちになっていってるからいいだろうけれど、なんか恋愛的に見ると残酷…っていうおばさんの邪推です。

言いたいこと言い切った順ちゃんに、観ているこっちとしては一番大切なこと言わなきゃ!と願うような気持ちで…結果はわかってても。

覚悟を決めるように、順ちゃんは「わたし、坂上くんが好き」とはっきり告白。

それに対して「ありがとう。でも俺、好きなやついるんだ」

うわあああああああああああああああ知ってたけど!知ってたけど!なんて純粋で残酷!でもそれが青春…思い通りになることなんてそんなにないんだけど、切なすぎる…わたし拓順推しで観てたから…でもそのときの順ちゃんの泣き顔のあとの微笑みが美しくて……切なくて、坂上の野郎ーおめーぜってー後悔させたるからなーとか、うしろでガヤ入れたかったわw

そして順を連れて拓実が舞台へと戻り、順は少女の心の声として歌いだして大団円。結局拓実は菜月とよりを戻しそうなところで終わり、菜月が好きでラブホいこーぜとか言っていた(語弊がある)大樹が実はだんだん順に惹かれていて、告白するというまさかの展開のなかで物語は終幕する。大樹、ぶちキレてたもんね、順ちゃんが消えた理由がわかったとき。お母さん来てるって気がついて伝言頼んでたし。

 

所謂青春と呼ばれる時期は、長い人生のなかでは一瞬であり、しかしその一瞬に、どれほどのこころの機微が詰まっているか。十代の感情は剥き出しで、残酷、酸っぱくて、それでいて優しい。自分の存在意義とか立ち位置とか、必要とされているかそうではないのかとか、将来への不安とか展望とか、まわりのひととの関わり──友情とか恋とかそういうすべてをひっくるめて揺れ動くさまがスクリーンに映し出されていた。そのなかで簡単なようでとても深く、難しいもの、失くしてしまったほうが楽とさえ思うほどの、それでも本当に大切な、必要な、伝えたい誰か、話したい誰かのために発したい、発すべき言葉をテーマに描く今作に、こころをえぐられた。そうして自分の青春を振り返り、どれほど大切な言葉が言えないままに消え去り、どれほど性悪な言葉が誰かを傷つけてしまったかということをかなり考えさせられた。それでもそれがわたしの青春のすべてだった。今でも言えないまま仕舞われている言葉はある。それをこれからどれだけ伝えることができるのか、それを今思っている。

 

あ、吉田羊さんの声がとてもよかったです。お母さん役。感情を抑圧しつつも、つい娘を疎ましく思っていることが漏れてしまうところや、最悪、って娘にぶつけてしまうところ、それでも優しさがあったり。

それと相沢くんのキャラが最高でしたww